パンストは性の権利を支持しています…アニメシリーズ『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:日本(2025年)
シーズン1:2025年に各サービスで放送・配信
監督:今石洋之
性描写 恋愛描写
にゅーぱんてぃあんどすとっきんぐうぃずがーたーべると
『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』物語 簡単紹介
『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』感想(ネタバレなし)
“delulu”な時代でも
ケンブリッジ辞書に「delulu」という単語も追加された2025年(The Guardian)。もともと「自分はアイドルと付き合える」と妄想的に信じるK-POPの熱狂的なファンを嘲笑する言葉でしたが、今やあらゆる妄想に執着することを指す概念になり果てました。
まあ、でも他人に迷惑をかける妄想はさすがにちょっとあれですけど、妄想するぶんには自由ですからね。悪いことじゃないと思います。たまに叶っちゃったりしますしね…。
2025年は「このアニメの続編が来ないかな~」とずっと妄想して欲していたファンの願いを叶った1年でもありました。
そのアニメが本作『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』です。
始まりは2010年。「ガイナックス(GAINAX)」制作で『天元突破グレンラガン』で有名だった“今石洋之”が『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』というアニメを生み出したことが全ての発端です。
本作は当時の日本のアニメの中でもかなり異色の存在感でした。日本のアニメ製作陣があえてアメリカのカートゥーンの絵柄や演出で作った…みたいなノリで、性的な下ネタをふんだんに盛り込んでいるのが最大の特徴です。粗削りながらやたらマニアックなパロディもたくさんで、その勢いは完全にアメリカそのもの。
それもそのはず着想元になったのがアメリカのアダルトアニメの『Drawn Together』だそうで…。この『Drawn Together』は2004年から2007年に放送された作品で、徹底してパロディに特化し、強烈に下品で風刺的で、どんな題材でも過激に攻め込みまくっていました。
“今石洋之”含む製作陣はこの『Drawn Together』のような作品を日本でも作りたいということで『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』を誕生させたわけです。
『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』は、「パンティ」と「ストッキング」という非常にアナーキーな天使の姉妹が主人公で、とくにパンティは気に入った男とセックスしまくることを日々の糧とする女。当然、絵的にも物語的にも放送するのがギリギリなのですが、遠慮しませんでした。
結果、この異色の『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』は一部のマニア、とくに海外からはカルト的に支持されました。
最終話がいかにも続編に期待を持たせる終わり方をし、当然、続編を強く欲する声がファンからあがり、“今石洋之”自身も作る気満々だったようですが、完全に難航し、音沙汰なしになります。それはアニメ界隈事情に詳しい人なら察せるように、「ガイナックス(GAINAX)」内の組織的ゴタゴタも影響したのでしょうし、この作品が表現ゆえにかなり放送しづらいので資金集めが難しかったのもあったのかもしれません。
しかし、“今石洋之”のアニメーション・スタジオ「トリガー(TRIGGER)」が権利を獲得したことで動いたのか、2022年についに新作『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』が発表され、2025年にやっとお披露目に…。待つこと15年間です。
15年もあればアニメ業界も激変しました。ただ、その変化はこの作品には都合が良かったかもしれません。というのも、1期の頃はまだアニメはテレビで放送するのが基本の時代。しかし、今はネット配信は主流です。
だから1期の頃の「放送コードのギリギリを攻める」みたいなことは必要ないわけです。実際、2期となる本作は、ネット配信で観られるのが「オリジナル版」で、テレビ放送で観られるのは「CENSORED版」という表現規制されたものになっています。
そのため、『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』は前作以上にやりたい放題になってますし、むしろ本領発揮ができたのはここから…ということなんでしょう。わざわざ「シーズン2」ではなく「New」と銘打っていることに製作陣の本作に対する意気込みが伝わってきます。
「トリガー(TRIGGER)」の看板アニメとして、アメリカのカートゥーンみたいにずっと作られ続ける作品になるといいですね。
『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
基本 | — |
キッズ | ヌードや性行為を含め、非常に性描写が多いです。 セクシュアライゼーション:わずかにあり |
『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
パンティは死にました。天使の姉妹だったはずのストッキングの「私は悪魔」宣言と同時に、パンティは666個にバラバラにされたのです。
地上界にある狭間の街「ダテンシティ」に天界から罰として落とされたパンティとストッキングのパンスト姉妹。平和を脅かすゴーストの退治を命じられ、退治すると獲得できるヘブンコインを集めるハメになりましたが、神父のガーターベルトやパンティに夢中のブリーフの支援もあって、なんとかやっていたはずだったのに…。
悪魔の首領であるコルセットの策略にまんまと引っかかってしまいました。
あれから5分。ガーターベルトは失意のブリーフを鼓舞し、「またくっつければいい」と、敵対していたデイモン姉妹のスキャンティとニーソックスも巻き込んで、パンティを元に戻すべく爆走します。
実はコルセットの囁きでストッキングは自分は悪魔だと洗脳されていました。その洗脳は膨れ上がり、やがてストッキングは巨大なゴースト怪物に変化。ヘルズゲートをこじ開けさせようとするも、ストッキングのスイーツ食欲のせいでビルを食べ始めてしまいます。
ガーターベルトたちは、怪物の頭上で666個の天使の肉塊を繋げてパンティを復活させますが、なぜかパンティは以前のようなビッチではなく、やけに恥じらいをみせます。
スキャンティとニーソックスの悪知恵で魔界のローションでパンティを巨大化させて、ストッキングの怪物に対抗させようとするも、どうやらヴァギナの部分の欠片が足りないことが発覚。みんなで神輿のように奉納しに、もじもじしているスカートの中へ突撃。ブリーフの意地で届けます。
こうして完全復活を遂げたパンティは、「天地の狭間に~」と口上を唱え、史上最大の姉妹喧嘩が勃発。互いにぐちょぐちょになるまで暴れまくり、いつの間にか元のサイズに。
ガーターベルトの制止で姉妹はとりあえず喧嘩をやめ、それぞれの用事を思い出してマイペースで去っていきます。
これがパンティ&ストッキング…。

ここから『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』のネタバレありの感想本文です。
ビッチ・リップスティック・フェミニズム
破廉恥な下ネタをふんだんに盛り込んでいる『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』。最近で言えば、アダルトアニメの『ビッグマウス』ほどの直球さはないですけども、同じく天使・悪魔を題材にしている『ハズビン・ホテル』フランチャイズと近しいキンキーな雰囲気があります。


ただ、『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』の場合、基本的にはパンティとストッキングのパンスト姉妹に通じる「ビッチ」の要素をフィーチャーしており、もっぱら「女性の性」を全面に押し出しています。
一方で、日本のアニメにありがちな、主に異性愛男性視聴者を楽しませるためだけに盛り込まれる「サービスシーン」とはまた違う類のものになっており、そこがこの『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』の一線を画す個性です。
なぜなら本作の「女性の性」は多くで「女性が主体的になって自分の性を表現する」という描写になっているからです。つまり、本作の「エロ」は、男性視聴者に消費させるためのエロではなく、女性が性欲を満たしたり、女性が性的に自己表現や行動をとる…そういう当事者主体のエロです。
製作陣はそのつもりはないかもですが、パンティもストッキングも、すごくリップスティック・フェミニズムを体現しているキャラクターです(そのあたりも海外人気の秘訣だと思う)。こんなふざけているアニメも、実はしっかり「性と生殖に関する健康と権利(Sexual Reproductive Health and Rights:SRHR)」を示せているんですね。
この新シーズンからは、パンティ&ストッキングのパンスト姉妹に加わるかたちで、デザインはよりキンクなスキャンティ&ニーソックスのデイモン姉妹、そしてバックストリート・ボーイズバンド風で『マジック・マイク』を思わせるポリエステル&ポリウレタンのポリポリ兄弟も絡まり、さらにリレーションシップの面白さも増量しました。
パンツディメンションを駆使するガンスミスビッチも、予測不能な奇抜さが追加されて楽しいですし、こちらも人気がでそうなデザインだと思います。
相変わらず全体のメインストーリーの魅力に乏しく、今回の悪役の叔父ラミーもそんなに愛着は沸かないので、そこが課題ではありましたが…。あと、ギークボーイことブリーフの活躍もやっぱり「最後に男をみせる」みたいな凡庸な展開ありきなので、もう少し捻ってほしいところはあります。
ちなみに今回、パンティはガンスミスビッチと性行為をしかけ、『コナン・ザ・グレート』をパロディにしたエピソード「ロード・オブ・ザ・コカン・ザ・グレート(Lord of The Kokan The Great)」ではがっつり女性とセックスしている姿が描かれます。パンティが男のみならず、女も相手にするようになり、若干今作では異性愛規範は薄れました。あとはガーターベルトなどホモフォビアなテンプレに陥らずにゲイを描けるかですかね…。
ファックなパロディたち
そんなこんな書きましたが、『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』の大部分はパロディが見どころです。この本作のパロディは単一の作品に専念せず、ある作品のパロディに別の作品のパロディを乗っけて、さらにその上に違う作品のパロディをまた付け足す…みたいな多重構造なので、かなりごちゃごちゃしています。
パロディの元ネタがわからないと、結構チンプンカンプンで置いていかれるのではないでしょうか。
例えば、エピソード「パンティ・ショーツ 魔根の伝説(Panty Shorts and the Penis of Doom)」では、タイトルカードは『インディ・ジョーンズ』シリーズで、パンスト姉妹の服装は『トゥームレイダー』で、出てくる怪物は『ハムナプトラ』シリーズ。このへんはまだ難易度低めです。
エピソード「プロジェクトS 〜史上最悪の道場〜(Project S: The Worst Ever Dojo)」では、道場師匠「万田」は明らかに『マンダロリアン』で、しかしその正体は『ウルトラQ』の「ケムール人」みたいな奴で意表をついてきます。
個人的には、エピソード「昨日に向って撃て!(Shoot for Yesterday!)」がお気に入り。アメコミのスーパーヒーローをパロディにする日本のアニメは他にもありますが、ここまでマニアックさを突き詰めている描写はそうそうないです。たぶん『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』の公開に合わせてなのかもですけど、“ジャック・カービー”愛が炸裂していましたね。「カマンディ」と「ザ・シング」がこうやって共演するとは…。
他にも、エピソード「ビッチ連続殺人!(Bitch Serial Killer!)で、『モデル連続殺人!』や『サスペリア』などジャッロ映画へのリスペクト溢れるトーンは好みでした。
この充実の濃いパロディだけでも楽しいので、『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』の続きはもっと期待しておきます。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
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日本のアニメシリーズの感想記事です。
・『光が死んだ夏』
以上、『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)NPSG製作委員会 ニュー・パンティ&ストッキングwithガーターベルト
New Panty & Stocking with Garterbelt (2025) [Japanese Review] 『New PANTY&STOCKING with GARTERBELT』考察・評価レビュー
#アダルトアニメ #天使 #悪魔