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アニメ『ブルーイ(Bluey)』感想(ネタバレ)…子どもも親も一緒に成長させてくれる

ブルーイ

そしてアニメも成長する…アニメシリーズ『ブルーイ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Bluey
製作国:オーストラリア(2018年~)
シーズン1~3:Disney+で配信(日本)
原案:ジョー・ブラム
恋愛描写
ブルーイ

ぶるーい
『ブルーイ』のポスター。4匹の擬人化された犬のキャラクターが家族写真のように映ったデザイン。

『ブルーイ』物語 簡単紹介

好奇心旺盛でやんちゃな子どものブルーイは、元気すぎる妹のビンゴと一緒に、いつも大好きな家や身近な場所で思う存分に遊んでいる。そんな子たちを優しく見守り、無邪気な遊びに付き合ってあげている父と母。4人は温かい家族を築いていた。どこまでも健やかに伸びていく創造力さえあれば、どんな瞬間も楽しい時間になる。今日は何をして遊ぼうか…?
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ブルーイ』の感想です。

『ブルーイ』感想(ネタバレなし)

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「ブルーイ」の世界へようこそ

アメリカの子どもたちが急にオーストラリア訛りで喋りだした…!?

それがどこまで本当に子どもたちの間で広がっているのかは知りませんが、そんな出来事はある作品の社会現象化による影響力のほんの一部にすぎません。

その作品とは『ブルーイ』というアニメシリーズです。

本作は、オーストラリア製作のキッズ向け(未就学児を対象)のアニメシリーズ。擬人化された犬のキャラクターが当たり前にいる私たちの社会と似た世界が舞台で、とある家族を主人公にしたいかにも定番なファミリー作品です。なんでも原案者の”ジョー・ブラム”いわく、ブタのキャラクターを描いたイギリスのキッズ向けアニメ『ペッパピッグ』のオーストラリア版を作ろうというスタート地点があったみたいですね。

主役の家族は、ブルーイという6~7歳の子どもをメインの主人公に、その少し年下の妹のビンゴ父(バンディット)母(チリ)という、シンプルな4人(匹?頭?)構成です。

このモチーフになっている犬は「オーストラリアン・キャトル・ドッグ」というオーストラリア原産の犬種で、別名は「ブルー・ヒーラー」と言い、主人公のブルーイの名前の由来になっています。

舞台もオーストラリアのブリスベンから創造されており、オーストラリア固有の動植物がでてきたり、あちこちにオーストラリアらしいネタがあります。まあ、わからなくても何も問題ないですが…。なお、犬以外のキャラはいないようです(いろんな犬種がでてくる)。

「オーストラリア放送協会(ABC)」の子ども番組専門チャンネル「ABC Kids」で2018年から放送され、国際放映権はディズニーが買ったことで、多くの海外では(日本も含めて)「Disney+(ディズニープラス)」で広く視聴できるようになりました。

でもなぜキッズ向けのアニメがそんな英語圏で話題を集めたのか…そう思うのも無理ありません。

「どうせよくあるキッズ向けのアニメでしょ…」と侮るなかれ。この『ブルーイ』、めちゃくちゃよくできているアニメだったのです。私も観る前は半信半疑でしたが、実際に鑑賞したらわかりました。他のキッズ向けのアニメと比べても頭ひとつ飛びぬける完成度です。これはみんなの心を掴むのも納得…。

本作は1エピソードが約7分の非常に短い構成なのですが、その単発のエピソードがどれも何かの賞をとれるのではないかというくらいに染み入る傑作級の物語。子どもが楽しめるのはもちろん、大人が感動してしまうレベルなんですね。

子育てする親の大人はもちろん、全然育児とかに関わっていない大人も大ハマりしますし、実際にそうやってファンを拡大。キッズ向けのアニメにしては実に多彩なファンダムを形成しました。これは『マイリトルポニー トモダチは魔法』のようなオタク層に訴求することに成功したタイプとも違う、『ブルーイ』ならではの射程範囲の広さで、これぞこの作品のパワーです。

アニメーションの質も高く、今どき安定量産することに重点が置かれやすいキッズ向けのアニメ業界において、これだけクオリティを維持するのは相当にクリエイティブなバランス感覚が問われると思うのですけど、見事に『ブルーイ』は達成し続けています。

お世辞抜きで、現状のキッズ向けのアニメの中ではトップ級に立つ作品じゃないかな。

日本だとまだ英語圏ほど話題にはなっていない感じだと思うけど、確実に日本のファンも開拓できるポテンシャルは持ってますね。社会に疲れ切った日本の大人の皆さんに届けたい…。

2024年5月時点で、シーズン3まで作られており、全体のエピソード数は「154」。たぶん累計で約1100分(約18時間半)くらいあると思いますが、ずっと繰り返し見ていたくなる楽しさがあります。『ブルーイ』エンドレス・ループ・マラソン鑑賞会ができる…。

まだ『ブルーイ』を一度も見たことがないという人は羨ましい…。これから『ブルーイ』を新鮮に堪能できるのですから。

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『ブルーイ』を観る前のQ&A

✔『ブルーイ』の見どころ
★大人もしんみり感動する物語の完成度。
★気持ちいいアニメーションと音のコラボ。
✔『ブルーイ』の欠点
☆子どもの前で大人が感動しすぎるかも…。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:単身でも楽しい
友人 4.0:大人同士も楽しい
恋人 4.0:気軽に癒されて
キッズ 5.0:子どもと一緒に
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ブルーイ』感想/考察(ネタバレあり)

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“ごっこ遊び”で学ぶ子どもと大人

ここから『ブルーイ』のネタバレありの感想本文です。

『ブルーイ』は基本的にどのエピソードも他愛のない日常ばかり。子どもが主役なので遊んでいるだけですし、とんでもない異常事態とかも起きません。

「影だけ踏む」「風船を落とさない」「あるサインで踊りだす」「時間停止で動かない」といった単純な遊びもありますが、その大半は「ごっこ遊び」です。

ロボットごっこ、ホテルごっこ、UFOキャッチャーごっこ、タクシーごっこ、お医者さんごっこ、バーベキューごっこ、馬ごっこ、サンタごっこ…。他にも無数です。

個人的には、おばあちゃんごっこがツボ。なんかブルーイとビンゴの中ではバズってるらしく、作中で幾度なくおばあちゃんごっこをしています(バスごっこしているときも)。おばあちゃんのリアリティが妙に高い…。

可愛くて微笑ましいというだけでなく、この作品が凄いのはこうして遊びのバリエーションを提示することで、本作を親子で鑑賞しながら「じゃあやってみようか」とそのまま真似て遊べるんですね。変に怒らずに遊びながらルールを身につけさせるというアイディアもあります。

こういう実用性まで完備した隙のないキッズ向けのアニメはなかなかありません。教材ですよ。

親の立場の人は嫌になるほど経験していると思いますが、元気フルMAXな子の相手をするのは本当に大変で、毎日その底なしの活力を消費するべく、苦労することになります。育児という仕事は持久力消耗戦でめちゃくちゃクリエイティブを問われますよね。

『ブルーイ』はそんな保護者にスっと手を差し伸べてくれます。しかも、それに加えてメンタルケアまでしてくれるんですよ。

本作で描かれる親側の父(バンディット)と母(チリ)。育児の姿勢はとても丁寧で、お手本的ですが、完璧ではありません。本作はそこも正直に映しています。

「ああ、あんなことを子どもの前で言うんじゃなかった…」みたいなよくありがちな失敗時にどうリカバーするか…。仕事しながらの育児の辛さ。育児から離れてどうやって息抜きでリラックスするか…。

「ごっこ遊び」というのは子どもが社会性を学ぶというステップに貢献するものですけども、その「ごっこ遊び」のようなふざけたノリの中で実は大人も成長しています。失敗を重ねながら一歩一歩「できること」が増えていく。子どもも大人もそれは同じです。

『ブルーイ』のどのエピソードも不思議と居心地よさを感じるのは、「できるようになるのは楽しい」という根本的な渇望を描いてくれるからなのかもしれません。

「子どもの成長の瞬間を見届ける」という楽しさ、「大人である自分の成長も噛みしめる」という楽しさ。その両方を味わってこその醍醐味がある、と。『ブルーイ』、深い…。私が勝手にそう受け取っているだけだけども…。

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お気に入りのエピソード

ここからは『ブルーイ』における、私の独断で選んだお気に入りエピソードを感想を交えて紹介したいと思います。本当は20エピソードくらい選ぼうと張り切っていたのですが(選びきれない!)、さすがにそれだと文字数がとんでもないことになるので、泣く泣く4エピソードだけに絞りました。

ちなみに「オリジナルのオーストラリア版」と「ディズニーの海外配信版」では扱っているエピソードの順番が違っていて、エピソードのナンバーがごちゃごちゃしているので、今回はタイトル(英題)のみでエピソード数は載せていません。日本では1話に3エピソードがおさまっています。

まずシーズン2の「Sleepytime」

賞もとっているエピソードなので、私がその素晴らしさを語るまでもないのですが、良いものは良いもんです。私に言わせるならもう『2001年宇宙の旅』ですよ。

物語は育児モノにありがちなベッドタイム・ストーリー。就寝時間になり、子どもたちはベッドに寝るのですが、ビンゴは大好きな人形を抱えて眠りだすと夢の中へ。なぜか宇宙空間にいて、壮大な宇宙の冒険に出かけていきます。その夢にまどろむ一方、現実のビンゴは夢遊病のようにあちこちを歩き回っており…。

『ブルーイ』の中では現実の日常ではなく、空想的な展開を描くエピソードがいくつかあるのですが、その非現実性を活かした気持ちのいい独創的なアニメーションが魅力です。この「Sleepytime」はそのクオリティが音楽と見事にマッチしていて、荘厳なんですね。『ブルーイ』はどのエピソードも音楽にこだわっていて約7分を耳にも快適に楽しめるのですが、このエピソードは桁違いでした。

その映像と音楽の融合だけでなく、しっかり「子どもの成長」に焦点があたっているのも見事で…。圧巻です。

次にシーズン3の「Faceytalk」

映像と音楽の融合という点で言えば、このエピソードも好きです。『ブルーイ』はちゃんとデジタル世代の子育てを描いていて、本作はビデオ通話が主題で、大部分がメディア画面だけで展開されます。ブルーイとビンゴがいとこのマフィンソックスとビデオチャットをしながら、そこでのハチャメチャな模様が怒涛の連続で開幕。

とにかく愉快で楽しいというだけでも大満足なのですが、「デジタル機器にハマりすぎる子どもとどう接するか」という親側の問題も背景では展開していて、マフィンとソックスの両親が一瞬喧嘩している姿が映ってしまい、シリアスになってしまうのか!?とハラハラさせるサスペンスの組み込み方も上手いです。「あ、映っちゃいけないものが映ってる。これは子どもに見せられない…」と大人が気を遣ってしまう感覚を熟知しつつ、ちゃんとオチをつける…プロットが手際よすぎでした。

3つ目は、シーズン2の「Baby Race」

これは『ブルーイ』ファン界隈でも有名なエピソードで、「泣ける率100%」なんて語られたりもするやつです。親の苦悩に寄り添ったエピソード群の代表作ですね。

チリがブルーイを産んで、まだそのブルーイがオムツしているような時期。他の同世代の子たちが続々とハイハイするようになっていく中、なぜか我が子のブルーイだけはハイハイしません。その成長が見られない現実にチリは母として焦り、「自分が間違っているんじゃないか」と不安を感じて落ち込みます。

でも親は親としてまずそこにいるだけでじゅうぶん役割を果たしているのであって、それをセリフだけでなく、最後のワンショットでブルーイの行動として表現する。「子どもの成長」は親の努力も影響するけど、「よく成長する子ほど、親が素晴らしいという証」ではなくて…。そんな優しいメッセージを授けてくれるエピソード。そりゃあ、人によっては大号泣になりますよ。

チリは流産の経験があることも匂わせていたので、それも踏まえるとこのエピソードのチリに寄り添いたくなる気持ちがますます強まります。

4つ目は、シーズン3の「Ghostbasket」

この「Ghostbasket」の次が「The Sign」という20分を超える『ブルーイ』集大成のエピソードであるのですが、「The Sign」は感動の名作だというのは私も納得です。でも私にとっては「The Sign」はこの「Ghostbasket」あってこそだな、と。

このエピソードでは、いつもの4人が「家を売るごっこ」をしています。ブルーイとビンゴのお得意のおばあちゃんごっこも炸裂し、なかなかに波乱な売却劇で、家にお化けがいるという可愛らしいオチも、こちらをニッコリさせてくれます。

でも最後にブルーイたちの家の前に本当に売却中の看板が立っていて…。「あ、本当に売っちゃうんだ…」と急に切なさが湧いてくると同時に、その寂しさなどの心の整理を「ごっこ遊び」で処理しているんだとわかると、もうね…(ビンゴは家を売るという意味をよくわかっていなかったのが後にわかるけど)。「The Sign」では結局家は売らないという土壇場の引っ越しキャンセルをするのですが、こういう見せ方をできるのは『ブルーイ』らしさだなと思います。

以上はあくまで私のお気に入りエピソード。他の人には「私はこれだ!」というイチオシがあるはず。こういうマイベスト・エピソードを見つけられるのも『ブルーイ』の楽しさですね。

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レプリゼンテーションは成長するか

『ブルーイ』をレプリゼンテーションの視点でみていくと、本作は表象に関しては賛否両論がこれまでありました。

ブルーイの家族はオーストラリアによくある典型的な家族像で、理想主義すぎるのではないかという意見もあります。人種については犬種に置き換えて表現しているとは言え、こういう動物擬人化モノに起きがちなことですが、どうしても現実要素を希釈している感じは否めません。

一方で、さりげなく多様な家族像の表象を盛り込んでいるとも言えます。例えば、ブルーイの両親は共働きですし、ジェンダーに固定されない育児の在り方を提示しています。ジェンダーと言えば、ブルーイを男の子だと思っていた鑑賞者もいるでしょうけど、ブルーイは女の子なんですね(父の体色が青なので、青のブルーイも男であると決めつけがち)。

キッズ向けのアニメとしてはかなり珍しい表象なのが、「Onesies」というエピソードで登場するチリの姉妹ブランディの存在。チリとは4年ぶりの再会らしく、微妙に気まずい空気が漂うのですが、どうやらこのブランディは不妊症のようでした(後の「The Sign」では妊娠できている描写がある)。

ニューロダイバージェントであると推察される子もいますし、他のディサビリティの子も映りますし、「The Sign」ではブルーイと同世代の子のプレッツェルがレズビアン・カップルの子であると示唆するセリフを言っていました(PinkNews)。ただ、日本語では全然わからない翻訳になってるけど…。

『ブルーイ』のレプリゼンテーションがどこまで成長していくのか、それも見守っていくことになりそうですね。

『ブルーイ』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer –% Audience 78%
S2: Tomatometer –% Audience 71%
S3: Tomatometer 100% Audience 75%
IMDb
9.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0
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関連作品紹介

キッズ向けのアニメシリーズの感想記事です。

・『パインコーン&ポニー』

・『デンジャー&エッグ なかよし2人のおかしな大冒険』

・『ひろがるスカイ!プリキュア』

作品ポスター・画像 (C)ABC Kids

以上、『ブルーイ』の感想でした。

Bluey (2018) [Japanese Review] 『ブルーイ』考察・評価レビュー