感想は1900作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

アニメ『パインコーン&ポニー』感想(ネタバレ)…タフでキュートな馬上槍プリンセス!

パインコーン&ポニー

タフでキュートな馬上槍プリンセス!…「Apple TV+」アニメシリーズ『パインコーン&ポニー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Pinecone & Pony
製作国:アメリカ・カナダ(2022年~)
シーズン1:2022年にApple TV+で配信
シーズン2:2023年にApple TV+で配信
原案:ステファニー・カリナー

パインコーン&ポニー

ぱいんこーんあんどぽにー
パインコーン&ポニー

『パインコーン&ポニー』あらすじ

元気に駆け回るのが好きな小さなプリンセスであるパインコーンは、小さな子馬のポニーといつも一緒に過ごしている。馬上槍でも弓矢でも何でもパワフルにこなす戦士に憧れるパインコーンだったが、ポニーはマイペースでおとなしい。それでも2人の絆はそんな簡単に壊れない。同年代の個性豊かな子どもたちと競いあったり、学びあったり、森でキャンプしたりと、毎日が新しい刺激と興奮に満ちている。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『パインコーン&ポニー』の感想です。

『パインコーン&ポニー』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

史上最も無害でキュートな馬上槍

『ROCK YOU!』という2001年のアメリカ映画があるのですが、そのやけにロックな名前に反して、舞台は中世のフランス王国&イングランド王国。でもクイーンの音楽をBGMにしたり、妙に現代演出をぶっこんでいる、なんともヘンテコな作品です。

この映画では貧しい若い男たちがやたらとチャラチャラしたノリで、本来は身分が上の者しか出場できない「馬上槍」試合に夢を駆ける姿を描くという、“持たざる男”の成り上がりストーリーとなっています。

「馬上槍」というのは12世紀から16世紀にかけてヨーロッパで騎士の間で流行した競技会。その名のとおり、対峙する二者が馬にまたがり、互いに鎧で防御を固めつつ、手にはバカでかい「ランス(大槍)」を持ち、同時に相手に向かって一直線に突進し、その槍で相手をノックアウトさせれば勝ちというルールです。団体戦もありますし、槍以外も使ったそうですが、やはり「ジョスト」と呼ばれる一騎討ちの印象が強いです。

言わずもがな非常に危険な競技で、熱狂的なブームが巻き起こったのも、その野蛮さゆえなのでしょうけど、当時の人たちの文化を語るうえでも今も作品によく登場します。

『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズとか、『最後の決闘裁判』とか…。

いずれも「男たちが繰り広げる荒々しい、そして常軌を逸した競技」として現代的感覚では映し出されます。

でも今回紹介する作品も「馬上槍」に夢中な主人公が中心にいますが、そんなイメージは1ミリもありません。それどころか、史上最も無害でキュートな「馬上槍」です。

その作品こそ『パインコーン&ポニー』というアニメシリーズ。

『パインコーン&ポニー』は「ドリームワークス・アニメーション」制作のキッズ向けアニメシリーズで、「Apple TV+」で独占配信されています。対象年齢は幼稚園から小学校低学年くらいでしょうか。無論、大人が観ても全然良いのですけど…。雰囲気は『アドベンチャー・タイム』寄りかな。

この可愛らしい絵柄のアニメは、ファンタジーな世界観が舞台なのですが、一応は私たちの現実社会の歴史をところどころ感じさせるものがあり、いろいろな地域の昔の文化社会をごちゃ混ぜにしたような世界が構築されています。

そして主人公は小さい子で、プリンセスということになっており、とても活発で冒険大好きで、馬上槍にハマっているという個性があります。といっても血生臭いやつではなく、本作で描かれる馬上槍は思わずこっちの頬が緩むほどに微笑ましいのですけどね。

そんな主人公をいつも一緒にいる一番の相棒が「ポニー」という子馬で、体型はまん丸でポテっとしています。このプリンセスとポニーがトテトテと駆け回っていれば、可愛さは二倍です。

『パインコーン&ポニー』は原作があって、“ケイト・ビートン”というカナダのコミックアーティストが2015年にだした児童書「The Princess and the Pony」です。“ケイト・ビートン”は「Hark! A Vagrant」という歴史上の著名人をユーモラスに描いたウェブコミックで有名になりました。

アニメ化となった『パインコーン&ポニー』の特徴は、何よりも先ほどから言及しているとおり、主人公の存在です。昨今はディズニーが古くから固定化してしまったプリンセスのステレオタイプをアップデートする試みがもはや主流ですが、この『パインコーン&ポニー』はキッズ向けの作品においては最も突っ切った描写になっています。

とくに「馬上槍」という今や「有害な男性性」の代表格のような古臭い要素をあえて「小さなプリンセス」に当てはめて、そのジェンダーの社会的割り当てを極端に揺さぶっているわけですから。

他にも、とても多彩なレプリゼンテーションが目に自然と飛び込んでくる作品でもあり、そもそも主人公が有色人種に設定されていますし、それ以外でもかなり主要キャラで有色人種が多めとなっています。加えてLGBTQの方面や、ディサビリティの方面でも、さりげなく行き届いており、今の時代の子どもに見せるアニメーションとして”やるべきこと”は全部果たしています。

小さい子に見せるアニメをお探しなら『パインコーン&ポニー』はベストフィットしますし、荒んだ社会に疲れた大人もこのアニメに逃げ込んできてもいいですよ。

スポンサーリンク

『パインコーン&ポニー』を観る前のQ&A

✔『パインコーン&ポニー』の見どころ
★可愛らしいプリンセスとポニーの組み合わせ。
★多彩なレプリゼンテーション。
✔『パインコーン&ポニー』の欠点
☆基本的に低年齢向けの作品なのでそのつもりで。

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:癒される
友人 3.0:子ども向けだけど
恋人 3.0:関心あれば
キッズ 4.0:低年齢児童に
スポンサーリンク

『パインコーン&ポニー』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『パインコーン&ポニー』感想(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(序盤):めちゃカワよりも…

スターディストーンの町。競技場へ馬上槍の練習に行くために意気揚々と歩いているのはパインコーンポニーです。

パインコーンはこのスターディストーンで暮らす母キミヤと父アーロの子どもで、誕生日に贈られたこの小さな子馬のポニーを大切にしており、いつも一緒に連れ歩いていました。

ポニーは少々気弱で慎重な性格。オナラが癖で、びっくりしたときにはよく音がでます。活発なパインコーンに振り回されることも多いですが、ポニーにとってもパインコーンは欠かせない存在です。

馬上槍をやる気満々のパインコーンは自分のランスを持って、競技場の前に到着します。ところが予想外の事態に直面。今、この競技場では「めちゃカワ子馬コンテスト」が開催中なのだそうです。それぞれの考える可愛らしい衣装で着飾った馬とパートナーがズラリと並んでいます。槍なんて持っている人はひとりもいません。

全然思っていたものと違ったのでガッカリするパインコーン。でもポニーは参加したがり、タフな戦士をきどるパインコーンはしょうがなく付き合います。さらにパートナーも参加だと言われて躊躇しますが、こうなったら引けません。

ポニーの可愛さを磨いてあげることにし、納得のいく可愛さに到達したと実感していざ出場。いくつかの審査要素があり、その中でもダンスが苦手なパインコーンを察して、ポニーがアシスト。馬上槍を活かして、息の合ったパフォーマンスを見せます。大歓声の中、優勝となったパインコーン&ポニーはトロフィーを手にして大満足でした。

普段、パインコーンは戦士クラスに通っていますが、親友のホーソーン魔法クラスに在籍しています。ホーソーンはおばあちゃんのマグノリアが実力のある魔法使いなので、自身も憧れていますが、ときどき張り切りすぎて失敗することもしばしば。魔法クラスのグレイムーン先生はそれでも優しく教えてくれます。

戦士クラスの先生はグラディスです。屈強な歴戦の戦士ですが、ついつい頑張りすぎるパインコーンをこちらも丁寧に見守ってくれています。グラディスにはレンという愛するパートナーがいて、たまにレンが授業をすることもあります。

同年代の友達もたくさんいます。アナベルは芸術家の育ちで、常に気品と優雅さで気取っていますが、本音は戦士として活躍したいと思っています。その点ではパインコーンと同じ心を持っており、最初は距離がありましたが、しだいに親しい仲になっていきます。

スターディストーンの周辺では不思議な生き物もいっぱいです。森にはランドクラーケンがいたり、はたまたベジタリアンなトロールがいたり、ふいに現れるサイクロプスも、そして山の頂上には神秘的な力を持つドラゴンが眠っていると言われています。

そんな刺激に満ち溢れた世界に囲まれて、パインコーンとポニーは今日も元気に駆けずり回っていました…。

この『パインコーン&ポニー』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2023/10/04に更新されています。
スポンサーリンク

敬うことを必要としないプリンセス

ここから『パインコーン&ポニー』のネタバレありの感想本文です。

『パインコーン&ポニー』の主人公であるパインコーンは一応はプリンセスということになっています。ただ、そう言われないとわからないほどにプリンセス感がゼロなんですけどね。

その理由はこのキャラクターの描かれ方にあって、一般的にそのキャラクターがプリンセスであることを視聴者に認識させる要素がことごとく存在しないからです。

例えば、一般にプリンセスのコードとして定番は「ゴージャスなドレス」ですが、そんなものはパインコーンは着ていません。それどころか上品さみたいなロイヤルな装いも生活実態も全然なくて、母と父もわりと素朴なスタイルです(どっちかと言うとあの両親は野生派)。王女です!王です!みたいな佇まいではありません。

かろうじてお城に住んでいるあたりで、王族っぽさがでていますが、そのお城もこのスターディストーンの町のシンボルになっている気配もなく、随分と控えめ。富を贅沢に所有している様子も無し。城は無駄に広いですが、召使いみたいなのもいないですから。

そしてこのパインコーンは王族もしくは統治者として敬われている感じは薄いです。タウンミーティングと称して住民の悩みを聞く場面があったくらいでしょうか。ランドルフ王子との外交もあったけど…。

そんなこんなでこのパインコーンは同年代の子どもたちと何の支障も無く馴染んでいます。浮くようなことはありませんし、周りからチヤホヤされることもありません。ホーソーンとはお泊り会するフラットな関係です。

こうしたプリンセスの「脱ロイヤル化」というのは、現代の子どもたちへの作品を創作するうえで、やはり避けては通れなくなっているのだと思います。さすがに作品を通して小さい子に「超富裕層の暮らしは最高です」「特権に憧れて手に入れるべきです」とはメッセージを送れませんからね。

それが結果的にこのパインコーンのような「庶民的プリンセス」という表象を新たに生み出すことに繋がっているのでしょう。

『ラプンツェル ザ・シリーズ』など活発なプリンセスというのは別に珍しくもないですが、『パインコーン&ポニー』のように初めからロイヤルを脱ぎ棄てているプリンセスというのは、ちょっと新鮮でした。

スポンサーリンク

多彩なレプリゼンテーション

『パインコーン&ポニー』は非常に多彩なレプリゼンテーションが目に映ります。

これは本作のショーランナーである“ステファニー・カリナー”も意識したうえで創作に臨んでいることをインタビューで明かしていますThe Hollywood Reporter。エディターの“タネカ・ストッツ”は、『マイリトルポニー: ポニーライフ』『スティーブン・ユニバース・フューチャー』を手がけてきた人物ですが、インタビューではアニメーションの経験がない作家をどんどん加えることが作品の表象の多様性を上げるうえで重要だと述べており、実際、本作にもノンバイナリーのライターや先住民のライターがチームに加わっているそうですAnimation Magazine。要するにキャリアありきではなく、全然別の才能をピックアップすることが結果的に作品で描かれる多様性をより自然に見せているということですね。

主人公のパインコーンは有色人種で、なおかつ体型も細身ではありません。それを気にさせるシーンはなく、そこに疑問を挟む余地はないです。

母のキミヤ、先生のグレイムーン、親友のホーソーンと、有色人種のキャラクターが添え物程度ということももちろん無し。とりあえず1キャラ入れておけばいいだろうという雑さなんて皆無。

同年代の子たちも多様で、中には松葉杖車椅子を日常的に使っているセレスティアみたいな子もいて、しっかり対等に魔法を学んでいます。

そして先生のグラディスにはレンというパートナーがいますが、このレンはノンバイナリーのキャラクターとなっています(演じているのは“セル・アンソアテギ”というノンバイナリー俳優)。さらにグラディスには初恋の相手ジュリがいたことも明らかになり、「亡くなった人を偲ぶ日」でパインコーンは他者の人生の奥深さを覗くことになります(この世界のキャラクターはどうやら数百年の寿命があるらしい)。

多彩なレプリゼンテーションの中、パインコーンは物事は一面的でないことを身をもって知っていきます。誰にとっても手放せないお気に入りのモノがあってそれは恥ずかしいことではないし、相棒のポニーにだってプライベートはあるのでそれを尊重してあげるべきだし、筋力だけでなくいろんな人のアイディアを取り入れることが問題解決の最善になる…。

シーズン2の第3話で、ルルというボランティアしている子のエピソードがありましたが、ルルを戦士と魔法使いのどちらにさせるかパインコーンとホーソーンは競いますが、結局「将来のことはまだ決めたくない」というルルの意思を認識します。これはアイデンティティを連想するテーマでしたね。

シーズン2の第2話の、収穫祭の最中でカエルたちを助けるエピソードも「伝統で困っている者がいるならその伝統も思い切って変えよう」という確かな反省と献身の姿勢があって良かったです。

『パインコーン&ポニー』はこうしたクリエイターの細やかな包括的イマジネーションによって、子どもに居心地の良さを与える、まさに2020年代に求められるキッズ向けアニメシリーズでした。

『パインコーン&ポニー』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer –% Audience 80%
S2: Tomatometer –% Audience –%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
スポンサーリンク

関連作品紹介

子ども向けのアニメシリーズの感想記事です。

・『全力!プラウドファミリー』

・『ふしぎの国 アンフィビア』

・『アウルハウス』

作品ポスター・画像 (C)Apple パインコーン・アンド・ポニー

以上、『パインコーン&ポニー』の感想でした。

Pinecone & Pony (2022) [Japanese Review] 『パインコーン&ポニー』考察・評価レビュー