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『ラブ&モンスターズ』感想(ネタバレ)…Netflix;アイ・ラブ・モンスター!

ラブ&モンスターズ

私はモンスターを愛しているだけで人生が充実してる!…Netflix映画『ラブ&モンスターズ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Love and Monsters
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:マイケル・マシューズ

ラブ&モンスターズ

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『ラブ&モンスターズ』あらすじ

人類はほぼ滅亡してしまった。生き残った者たちは地下に潜んで暮らしていた。それから7年、無線を通じて高校時代のガールフレンドを探し続けていたジョエル・ドーソンは、130キロ離れた沿岸地域で暮らす彼女とついにつながる。再び想いに火がついたジョエルは、最愛の彼女に会うために、地下での生活を捨て、危険だらけの地上へと命がけの旅に出ることを決意する。その地上にいたのは魑魅魍魎のモンスターたちだった。

『ラブ&モンスターズ』感想(ネタバレなし)

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私のモンスター愛が炸裂する

I LOVE Monsters !

…なんか、いきなりの告白になってしまいましたが、私は映画のジャンルで特別に好きなものがあって、それがアニマルパニックものです。 要するに動物が人間たちを襲ったりする系のやつです。野生動物そのまんまでもいいですし、何かしらの理由で巨大化したり凶暴化したり異常進化していてもOK。とにかくこのジャンルが昔から大好物なのです。

世間的にはアニマルパニック映画と言えば、1975年の『ジョーズ』が大きな礎を作った偉大な名作となっています。しかし、それ以前にも有象無象のアニマルパニック映画がわんさか存在しており、私はそのクラシックな作品たちもこよなく大好きです。

例えば、アリだったら、1954年の『放射能X』や1974年の『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』とか。

当時は本物の生き物を特撮で工夫して活用しており、その歪さも込みで味わいがあります。1977年の『巨大クモ軍団の襲撃』はクモを大量にばらまくという超強引で単純な撮影が最高ですし、1976年の『スクワーム』もミミズ版でほぼ同じ戦法。このへんはまだ想像したら気持ち悪いなと思うからいいんです。1972年の『Night of the Lepus』なんて、実際のウサギをミニチュアのセットで走らせて巨大ウサギが襲ってきたという設定を表現しているのですが、その試みも虚しく、なにせウサギなので全然怖くないという…。こういうたまに笑っちゃう絵が飛び出すのも醍醐味です。

そんな実物アニマルパニック映画もすっかり過去のもの。今ではCGが当然になってしまいました。けれどもそんなCGによるアニマルパニック映画も、かつての実験的しっちゃかめっちゃかを極めていた実物アニマルパニック映画の歴史があってこそであり、オマージュを捧げてくれる作品もあります。

最近であれば『キングコング 髑髏島の巨神』『アナイアレイション 全滅領域』はその系譜を感じさせるものでした。

そして今回、さらに実物アニマルパニック映画のテンションを受け継ぐナイスなヤツが現れてくれました。それが本作『ラブ&モンスターズ』です。

本作の内容はシンプル。人間文明が崩壊して突然変異で異常凶悪化した野生動物が大地を跋扈するようになった世界が舞台。アリもゴキブリもカエルもカタツムリも何だってクリーチャーに変身。魔界のようになっています。

もちろんそのクリーチャーはCGで表現されているのですが、明らかに往年の実物アニマルパニック映画への愛を感じさせるものになっており、私みたいなファンは恍惚になります。当然そんな隙だらけの状態でクリーチャーを見つめたら真っ先に食われてしまうのですけど…。

このクリーチャーマニア垂涎の映画を生み出したのが“マイケル・マシューズ”という南アフリカの監督。2017年に『ファイブ・ウォリアーズ』という作品で長編監督デビューし、そっちはアパルトヘイト体制下にあった南アフリカ共和国を舞台に西部劇風の展開をさせるという異色の作品。そのお次がまさかこんな尖ったマニアックなジャンルを貫いてくるとは…。

でも脚本は『アンダーウォーター』“ブライアン・ダッフィールド”と、『モンスタートラック』“マシュー・ロビンソン”で、この2人が揃えば「そりゃあクリーチャー映画になるよね…」と納得。

俳優陣は、主人公を演じるのは『メイズ・ランナー』シリーズで撮影中の事故による重度の怪我を負いつつも奮闘してやり遂げた“ディラン・オブライエン”。また今回も過酷な世界でサバイバルすることに…。

ヒロインにはドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『Marvel アイアン・フィスト』でおなじみのアジア系イギリス人の“ジェシカ・ヘンウィック”。他にも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヨンドゥで話題となった“マイケル・ルーカー”など、個性豊かな俳優が揃っています。

物語は王道ながら、閉塞感のある今のコロナ禍の世界に生きる私たちに前向きな希望を与えてくれるものにもなっていると思います。クリーチャー大好きな子どもでも大人と一緒にお楽しみください。

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『ラブ&モンスターズ』を観る前のQ&A

Q:『ラブ&モンスターズ』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年4月14日から配信中です。
Q:映像には残酷描写はありますか?
A:人が死ぬ描写はありますが、ゴア表現というほどの直接的なものはありません。クリーチャーはかなりリアルで気持ち悪く映像化されているので、虫などが苦手な人は不快感はあるでしょう。

オススメ度のチェック

ひとり4.5:モンスター映画好きは必見
友人4.0:ワイワイ盛り上がる
恋人3.5:趣味に合うなら
キッズ4.0:モンスターが平気なら
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『ラブ&モンスターズ』予告動画

ディラン・オブライエン主演『ラブ&モンスターズ』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ラブ&モンスターズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):世界の強者はモンスター

世の中、何が起こるかわからないもの。

ある日、突然世界が壊滅しました。アガサ616という小惑星が地球に落ちそうになり、人類はその危機を乗り越えるべくミサイルで撃破。無事に成功しました。

ところが一難去ってまた一難。いいえ、最悪の事態の引き金になってしまいました。ミサイルの化学物質が地球に降り注ぎ、全てを変えてしまったのです。

恐ろしいクリーチャーが地球を支配し、人間を食い尽くしてしまいます。身近な生き物が突然凶悪になり、それはもはや私たちの知るあの生き物の面影はゼロです。アリでも金魚でも…。

この緊急事態に軍隊が出動しますが、抵抗も虚しく、脆弱な人間はあっけなく敗北。人口の95%が死亡し、生き残った者は避難することになります。

ジョエルもまたそのひとり。彼は17歳で退避してからこの避難壕(バンカー)に7年も籠っていました。

ジョエルは寝たふりをしつつ、隣のカップルのイチャイチャを聞いています。ティムとエヴァはお構いなし。ジョエルの暮らす地下のコロニーでは若者が多く、たいていはみんなカップルで、赤ちゃんも生まれたりしています。

一方のジョエルは独りです。友達と言えば、キャロルという牛と、もう1頭のガーディーという牛。そして、メイビスという壊れて動かないロボット。

ここでの暮らしは常にサバイバル。資源も乏しいです。狩りチームが危険な地上に出て食べ物をとってくることもあります。しかし、ジェエルは料理担当

ある日のこと。突然の侵入を検知。すぐに武装したメンバーが数人で調べに向かいます。ジョエルも行くつもりでしたが、「お前に無理だ」と言われてしまい、お留守番。

武装チームが進むのをモニターで見守るジョエルと他の仲間たち。しかし、ひとりがやられ、状況はヤバいことだけはわかります。焦ったジョエルは単身で助けに行くことに。ボウガンを手に、ゆっくり進み、コナーと呼びかけるが返事なし。

そして目の前に現れたのは、カーテンの奥に潜む巨大生物。ジョエルは恐怖で立ちすくみ、仲間が助けに来たので助かりました。そうです、ジョエルはフリーズをしてしまう、臆病な奴でした。

昔は違いました。7年前。カリフォルニア州のフェアフィールド。ガールフレンドのエイミーとじゃれ合う楽しい日々を過ごしていた時間。キスをし、車内の後部座席に移ろうとした瞬間、警報。そして地元の街が 空爆されているのが丘から見えて…。

今はジョエルはエイミーとは離れ離れです。遠くの別のコロニーにいるらしく、無線で連絡をとれるのですが、寂しさは募るばかり。エイミーのコロニーまで130キロ。歩いて7日かかる距離で、武装チームさえもそんな長距離移動はしたことがありません。

けれどもジョエルは決心しました。エイミーに会いに行くと…。

まず西はどっちだっけ…。

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「大統領、蛾に殺される」

『ラブ&モンスターズ』の魅力はやっぱりタイトルにあるとおり、モンスターたち。

個性豊かでおぞましくエキゾチックなクリーチャーが徘徊するあの世界は、私にとっては最高です。あのクリーチャーのビジュアルもたまらないですね。

本作はとにかくそのクリーチャーの登場のさせ方がイチイチ上手いです。最初のコロニー内でのカーテン奥からの昆虫型生物の出現は見事なまでにホラーであり、これは確かにジョエルのような臆病でなくとも怖いと思うのは当然だなという実在感があります。

で、続いて現れるのが巨大なカエル。私は本作のモンスターたちの中ではこのカエルが一番好きかもしれない。ちゃんとカエルらしい動きをしていながら、巨大化した際の重量感と圧迫感が上手く再現されていました。きっと毎日カエルに襲われている小虫たちはいっつもあんな思いをしているんですよ…。

「ボールダースネイル」こと巨大カタツムリも愛嬌がありました。大人しいけど踏みつぶす…。ここでも登場の見せ方が良かったですね。

そしてある種の強敵感が漂う巨大ムカデ。地中からの満を持しての登場といい、相手を巻き上げて追い詰めるあの独特の捕食スタイルといい、まさしくムカデに求める全てが揃っていました。ちなみに本作を観たその日に家の中でゲジゲジを発見した…偶然、かな…。

終盤は巨大カニの出番。つぶらな瞳が可愛い。実際にカニの目ってキュートだしね…。だからカニの目を見ながらカニを食べるとすっごく申し訳ない気分になる…。

登場する生物が最近の既存のものと被らないようにしつつ、フレッシュかつ需要を満たす演出力。そこにはやはり往年のアニマルパニック映画、とくに実物を駆使した作品のリアリティの継承がありました。

本作がアカデミー視覚効果賞にノミネートされて評価されたのも嬉しいです。

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筋肉じゃない、ユーモアです

また、『ラブ&モンスターズ』はお話としては王道です。犬とのサバイバルな旅路は『アイ・アム・レジェンド』、もっと遡れば1975年の『少年と犬』を連想させますし、道中のロードムービー的な流れや音楽の使い方は『スタンド・バイ・ミー』そのままです。

ただ、本作の良さはそこに絶妙にユーモアを混じえているところだと思います。映画『モンスターハンター』のようにエネルギッシュに「モンスターを狩ってやるぜ!」というような暑苦しさもない。

どちらかといえば『ラブ&モンスターズ』はオタク的な内向性のあるキャラクターの立ち位置になっており、主人公が自分の不甲斐なさをセルフツッコミするタイプと言えます。

途中で出会うクライドと8歳のミノウのキャラクターなんてまさにその象徴ですね。マッチョなパワーで生き残るんじゃなくて、軽妙なユーモアと緩さで生存していくという…。

あのクライド&ミノウの2人のスピンオフとか観てみたいのだけどなぁ…。

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自分の殻に籠らずに

『ラブ&モンスターズ』はオタク的な内向性のある主人公を描くストーリーとしてとても正統派でありつつ、正しい道案内をしている映画だったと思います。

そもそもジョエルはいわば「インセル」的なポジションに沈んでいました。周りは恋人がいてイチャイチャしているような奴らばっかり。対する自分は独り身で情けなくてバカにされている…と思い込んでいる

インセルというのは、容姿が不細工だ、リアルで友人がいない、モテない、セックスしたことがない…そんなもろもろの理由をもって自分を「社会の底辺にいる哀れな存在」だと自認する、劣等感の底なし沼にハマった人たちのことです。ネットの世界ではよく見かけますし、自分がそうだとギクっと思う人もいるはず。

そんなジョエルはかつてのガールフレンドに会えれば幸せになれると考えています。要するにロマンチックなパートナーシップだけが人生の勝ち組であるという発想です。母を間近で失った後悔を引きずり、それを払拭できる理想の相手だと捉えてもいます。

ところが実際にそのゴールに到着し、エイミーに出会えたはいいものの、ブルックスといういかにもイケメンが彼女の傍に存在していることですっかり劣等感丸出しで敵対心を発動。「こんなはずでは…」というまたもやの劣等感に沈むことに…。

結局、あのブルックス一味は悪者でカニに食べられますが、ここでエイミーと結ばれてハッピーエンドとならないのが本作の良さです。

エイミーはあのお年寄りたちを率いるというリーダーシップを発揮しており、彼女は彼女でロマンスだけが全てではない、自分のやりがいをすでに見い出していました。ジョエルもエイミーのことを「自分を充実させるアイテム」のように考えていたことを反省。彼女の生き方を尊重します。

そして同時に以前のあのコロニーの仲間たちが思っていた以上に自分を対等に扱っていたことを自覚。ジョエルはバカにされていたんじゃない、ジョエル自身が自分をバカにしていたのでした。

こうしてジョエルは劣等感を卒業し、コミュニティの大切さを痛感し、リーダーへと成長します。歪んだ男らしさ(マスキュリニティ)も捨てて、ひとりの人間として。

「隠れていても仕方がない。人生を楽しもう」

この本作の着地は、インセル的なオタクにグサっと刺さるものですし、もっと拡大すれば今のコロナ禍で閉塞感に沈んでいる私たち全員の再起を後押ししてくれるような、そんなエンディングです。

作品としては世界観全体や後味としてもアニメシリーズの『キポとワンダービーストの冒険』に凄くそっくりなのですけど(そっちは有色人種主体で別のオリジナリティがありますけど)、『ラブ&モンスターズ』はもうちょっとプライベートな殻を破りつつ、人類全体に希望を与える作品でした。

大事なのはカノジョとラブラブすることじゃない、モンスターとラブラブすることなんです(なんか違う)。

『ラブ&モンスターズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 93% Audience 89%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)Paramount Pictures ラブ・アンド・モンスターズ

以上、『ラブ&モンスターズ』の感想でした。

Love and Monsters (2020) [Japanese Review]