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『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』感想(ネタバレ)…電波が無いとパニックになるんです

ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ

だってそういう世代だから…映画『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Bodies Bodies Bodies
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2023年に配信スルー
監督:ハリナ・ライン
恋愛描写

ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ

ぼでぃーずぼでぃーずぼでぃーず
ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』あらすじ

嵐の接近が予想される中、20代の若者たちは、森の中に佇む豪華な屋敷でパーティを計画する。久しぶりにみんなで集まり、誰の邪魔もされない自由な空間をエンジョイし、やりたい放題にハイテンションになっていく一同。そこで夜の余興として始まった殺人ゲーム「BODIES BODIES BODIES」だったが、これが思わぬ事態を招く。偽りの友人関係や裏切りを暴くことになってしまい、パーティは最悪の事態へと様変わりし…。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』感想(ネタバレなし)

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Z世代スラッシャー映画の新たな代表に

ホラー映画スラッシャー映画というのは単に怖がらせているだけのジャンルに思うかもしれませんが、常にその時代性が投影されているものだと私は考えています。とくにハリウッドはホラー映画やスラッシャー映画を量産するので、時代性を捉えて個性を出していかないと作品として埋没してしまいます。なのでそこに注目するとまた面白さが深掘りできたりしますよね。

今のホラー映画やスラッシャー映画は時代性という意味ではおおまかに2種類あって、それは「過去」を描くものと、「今」を描くものです。「過去」を描いている作品は時勢としては過去でありつつも現代に通じるような恐怖をそこから醸し出します。一方で、「今」を描いている作品は、まさしく現在の人たちの恐怖を映し出すので、アプローチがよりストレートな傾向があります。

「今」を描いている作品の中でも、ことさら若い世代、いわゆる「Z世代」と呼ばれる若者を描く映画も近年は続々と登場し、バズりやすさを見せています。この傾向は今後も加速するでしょうね。

最近の「Z世代」ホラー&スラッシャー作品と言えば、『ハッピー・デス・デイ』(2017年)、『ザ・クラフト:レガシー』(2020年)、『ザ・スイッチ』(2020年)、『スクリーム』(2022年)、ドラマ『ウェンズデー』などが立て続いています。

今回紹介する映画も「Z世代」ホラー&スラッシャーとして名を連ねる、危なっかしい鋭利な一作です。

それが本作『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』

本作はとある都会から離れた立地にある避暑地的な邸宅に若者たちが集まってくるところから始まります。ジャンルとしてはものすごくベタな始まりです。若者だけで飲んで騒いで一夜を明かそうとテンションをあげまくっていると、案の定、殺戮が起こってしまうという…。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の面白いところは、スラッシャー映画ながら、その中身がしっかりZ世代なテイストに換装されていることです。あんまりどういうところがそうなのかを言及するとネタバレになるので言葉を濁すしかないのですが、観れば「そういうことね」とわかります。

また、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』はクィア映画としても注目でき、別にクィア自体をテーマにしていませんが、自然に当たり前のように描けているあたりはまさしくZ世代スタンダードですね。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』そのものはそこまで「革新的だ!」と太鼓判を押せるような独創性はないのですが、既存のジャンルが確かに一歩一歩ステップアップしている感触が実感できるのではないでしょうか。青春映画では最近は『リベンジ・スワップ』がそれをやってみせたように、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』はスラッシャー映画でそれを軽く実現してきた感じです。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の監督は、オランダの俳優で、2019年に『Instinct』を監督した“ハリナ・ライン”

俳優陣は、主演に『ヘイト・ユー・ギブ』『ディア・エヴァン・ハンセン』、そして今後は「スター・ウォーズ」新作ドラマ『The Acolyte』を控える“アマンドラ・ステンバーグ”が立っており、“アマンドラ・ステンバーグ”は本作では製作総指揮も務めています。ちなみに“アマンドラ・ステンバーグ”はノンバイナリーであることを公表しています。今やZ世代を代表する若手俳優のひとりですね。

共演は、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』の“マリア・バカローヴァ”、ドラマ『Generation』の“チェイス・スイ・ワンダース”、『Shiva Baby』の“レイチェル・セノット”、ドラマ『インダストリー』の“マイハラ・ヘロルド”、『ミートキュート 最高の日を何度でも』の“ピート・デヴィッドソン”、ドラマ『ファウンデーション』の“リー・ペイス”など。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』は結構2022年の話題のスラッシャー映画のひとつだったのですけど、日本では劇場未公開で、2023年に配信スルーとなってしまいました。なので認知度は低めになっていますが、「ここにいるよ!」ということでお忘れなく。

スラッシャー映画ですけど、そんなに過激なゴア描写は無いので苦手な人でも見やすい部類だとは思います。人は無惨に死んでいくけどね。

暗闇が大事な要素になっているので、部屋を真っ暗にして鑑賞すると、映画の臨場感は増しますよ。

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『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』を観る前のQ&A

✔『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の見どころ
★Z世代をチクリと風刺した皮肉な物語展開。
★物語をさりげなく支えるクィアな要素。
✔『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の欠点
☆ド派手な展開は一切ないのでそこは期待しないで。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:クィアな映画を観たい人にも
友人 3.5:気楽に観れる
恋人 3.5:険悪な状態でなければ
キッズ 3.0:殺害描写あり
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):パーティ気分は停電ひとつで消し飛ぶ

外でソフィービーの若い2人がたっぷりとキスをしています。ソフィーはビーの体をまさぐり、2人は横になって見つめ合います。ソフィーは「愛している」と告げますが、ビーは見つめ返すだけです。

ソフィーは車を運転し、助手席にはスマホをいじっているビーがいます。今はソフィーの幼馴染のデイヴィッドが家族の豪邸でパーティを開くので、そこに向かっている最中です。巨大な嵐が迫っており、ハリケーンの間はずっと友達と集まってパーティするのです。

「ハリケーン・パーティ」という文化は実際にアメリカの南東部では一般的です。

ゲートが開き、森に囲まれた広い敷地の中へ。忘れ物をしたとビーは一旦車に戻ります。

もうすでに他のみんなはプールにいました。デヴィッドの他に、その恋人で女優のエマ。ポッドキャスターのアリス、その年上恋人のグレッグ。そしてジョーダンです。

もうひとりマックスというゲストがいたのですが、前夜にデイヴィッドと喧嘩して帰ったらしいです。

赤い水着のアリスは「会いたかった」と陽気にソフィーに話しかけてきます。ビーもやってきたので紹介し、ビーは持ってきたズッキーニを渡します。ビーだけが労働者階級の出身なためか、イマイチ雰囲気を掴めていません。

グレッグは大きなナイフでボトルを切り裂いて豪快に飲み物を振舞います。

いきなり雨が降り出し、ハリケーンらしくなってきてテンションが上がるアリス。一同は家に戻ります。

ソフィーとビーは部屋でもいちゃついていると、ノックなしで入ってくるデヴィッド。デヴィッドはすっかりここの豪邸の主のような態度でした。

場にどう馴染めばいいかわからず、ひとり佇むビーにジョーダンが話しかけてきます。ソフィーについて「気を付けて」と意味深なことを呟いて去っていくのでした。

エマ、アリス、グレッグ、ジョーダンはノリノリで踊っており、ビーもお酒を勧められ、口にします。

夜にもなると、テンションはヒートアップ。ひたすらに飛び跳ねて踊り、気分のおもむくままに会話。ビーとジョーダンは楽しそうにくっついて踊ります。

そのとき、ソフィーが「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」をしようと切り出します。これはくじ引きでひとりが殺人鬼役と決まり、それが誰かは明かさずに、みんながライトを持って暗闇を逃げ、タッチしていき、最終的に犯人を当てるというもの。

その前にお酒を賭けて互いにビンタし合い、感情を昂らせます。ビーはデイヴィッドをビンタすることになりますが、ペチっと叩くだけで弱すぎるのでみんなもっと遠慮なくやっていいと囃し立てます。デイヴィッドはグレッグを不意打ちのように強烈にビンタして、一瞬場をヒヤっとさせます。

こうして準備も整っていよいよ部屋が暗くなります。それぞれが明かりを持ってスタートです。

ビーはスマホのライトで四つん這いになりながら恐る恐る進みます。逃げる者もいれば、急に驚かせてくる者もいて、予測つきません。

電気がつくと、床にグレッグが倒れており、首や手に蛍光ライトをぶら下げるアリスはふざけて泣きつきます。起きてとゆさぶるのですが起きず、それでもデイヴィッドが股間をボトルで小突くと起き上がるグレッグ。デイヴィッドとグレッグは少し険悪そうに睨み合い、でもグレッグはベッドにいくと言って部屋を出ていきます。

残りはパーティーを続けますが、まさかの停電。しかし、ここからもっと予期せぬ事態が襲い掛かることに…。

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犯人は…誰だ?

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』はスラッシャー映画の構造としては、犯人が誰なのかわからない状態でどんどんひとりずつ死んでいってしまうという、「そして誰もいなくなった」スタイルです。

嵐の到来でクローズド・サークルへと陥り、直前にやっていた「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」という人狼ゲーム的な構図とそっくりなかたちで仲間が死んでいく…見立て殺人としても成立しています。つまり、あからさまに舞台が整っているわけです。

そして冒頭から何だか怪しい人間関係が観客にチラ見せされていきます。ソフィーとビーは本当に両想いなのか? ソフィーと他の仲間たちとの関係は?

ついに人が死に始めると疑心暗鬼がどんどんと終わりが見えないほどに増幅。先ほどのパーティのノリはどこへやら、仲間割れが勃発していくことに…。

オチを言ってしまうと、今回の一連の事件に犯人はいませんでした

最初のデイヴィッド死亡はククリナイフでグレッグがやっていたボトル切りを自分でもTikTokで試そうとしてうっかり自身の首を切っただけ。ただの間抜けでした。

続いてのグレッグの死はみんなの疑心暗鬼の流れで殺してしまっただけ。一回りも二回りも年齢が違う男が必死にZ世代のノリに混じろうとして結局できずに終わっている姿は痛々しかった…(でもああいうシチュエーションはあるよね)。“リー・ペイス”ってだけでシュールなのに…。

3番目の死であるエマは、実は薬物依存症の過去があるソフィーがエマにコカインを渡してしまい、エマが事故で足を滑らせて階段から落ちたという真相。

次にビーが疑われて外に追い出され、今度はジョーダンが疑われ、アリスが巻き添えで揉み合い中に撃たれて死亡し、ジョーダンも転落死し、最後に残ったのはビーとソフィー…。

思えばちゃんとこの真実を示唆する伏線が前半には提示されており、例えばデイヴィッドは会話の中で「ガスライティング」なんてバカバカしいとミソジニー的な特権無自覚の発言をかますわけですが、本作はまさにガスライティング的な強迫観念が引き起こした悲劇の連鎖です。デイヴィッドはアホなので論外として、あの若い女子たちもガスライティングの問題意識は理解しているくらいのリテラシーはあるけど、いざ自分がその類似の強迫観念を持ってしまうと抜け出せない…。そういう墓穴を掘ってしまう有り様が描かれていました。

もっと素直に本音をだしあったり、不安があれば語り合ったりしていれば、こうはならなかったかもしれないのに、どうしても久々のパーティで集まれば見栄を張りたくなってしまうもの。コミュニケーションをしているようで実はコミュニケーションできていない若者たちの姿が暗闇から照らされる物語なのでした。

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ラストのキレがあれば良し!

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』でのこの強迫観念による惨劇が生じるきっかけのひとつが停電です。正確にはWiFiが使えなくなり、電波無しとなる状態です。これは言ってしまえば、スマホやSNSがないと何もできなくなってしまうデジタルネイティブなZ世代を痛烈に批評している構造でもあります。

オチがいいですよね。惨劇が過ぎ去っての翌朝、デイヴィッドのスマホで真相を知ってからの、茫然としているビーとソフィーの2人の前にマックスが帰ってきて「何があった?」と問われ、電波が入ったことをただ呟くしかできないビー。「I have reception」が今作のベストセリフか…。

電波が入ればわりと冷静になれる自分たちだけど、もう手遅れであるという…。

この手のジャンルの映画はラストのキレが良ければそれでいいというところもありますが、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』は『X エックス』と同様のエンディングのセリフの切れ味がありました。

一番役どころとして難しいのはビーだと思うのですけど、“マリア・バカローヴァ”の演技が絶妙でしたね。気弱なのかなと思わせておいて、アグレッシブで大胆な行動もとるし、終始何をしでかすかわからないスリルを与えてくれます。“マリア・バカローヴァ”、話題作の『続・ボラット』があれすぎて落ち着いて評価できなかったけど、普通に卓越した俳優だったんだな…。

クィア映画としても本作はさりげなく良くて、冒頭から2人の熱いキスで始まりますが、こういう同性愛はホラーやスラッシャー映画のジャンルでは不幸が待っているのが定番です。それを堂々と覆して話題となったのが『フィアー・ストリート』でしたが、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』もきっちりステレオタイプを回避して、あの2人の生存エンドへと繋げてきています。

単純なレズビアン・サバイブに終わらず、前述したとおりのZ世代への皮肉も交えての着地なので、そこは捻ってますけどね。本作はキス・シーンを一番最初に早々と持ってきている潔さが上手かったんじゃないかな。そこをメインのゴールラインにはしませんよ(そんなの最初にやっちゃいますから)という作り手の宣言が見えるし…。

本作はクィア映画としてはもっと先に行っている作品でした。こうやってクィアな人物がこのジャンルの中で当然のように関係に嫉妬したり、喧嘩したり、それでもしょうもないように愛し合ったりを繰り広げるのはいいですね。でもうっかり殺し合いしないでね。

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 85% Audience 69%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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関連作品紹介

「Z世代」ホラー&スラッシャー映画の感想記事です。

・『スクリーム』

・『ハッピー・デス・デイ』

作品ポスター・画像 (C)2022 Public House Rights LLC. All Rights Reserved.

以上、『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』の感想でした。

Bodies Bodies Bodies (2022) [Japanese Review] 『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』考察・評価レビュー