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シネマンドレイクが選ぶ「2019年 映画ベスト10」…映画に上下はないけど!

2019年も終わり。

消費税は増えて映画関連の出費も不本意ながら増えたけど、懲りずに映画もあれやこれやとたくさん観ました。たぶん消費税50%になっても映画は観るだろうな、自分…。

ということで、私的に選んだ2019年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2019年に劇場公開された or DVDスルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です。ついでに独自の部門別でも選びました。

さらに今年からドラマシリーズのベスト5も発表しています。

2019年も観ている映画の傾向はそれほど変わらず、とてもバラエティ豊かにいろいろ映画を観ました。どれくらい鑑賞したのかは相変わらず正確には数えていませんが、新作は全部含めると300は超えていると思います。エルサと同じなんです。声が聞こえるんです。映画を観なさいと…。私はいっつも「Into the unknown」状態ですよ。

ちなみに過去の年の「映画ベスト10」は以下のとおりです。

映画ベスト10

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10位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

2019年は日本でもショッキングな事件はいろいろ起こりました。中でも7月に起きた「京都アニメーション放火殺人事件」は創作に関わる人・創作を愛する人双方の心に甚大な深い傷を残すものでした。私もどうにもならない悔しさと悲しさで内心は沈みこんでいましたが、その事件から1か月ちょっとで公開された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観て、少し心が軽くなった気がします。作品を愛すること、作り手を愛すること、世界を愛すること。それが過去の犠牲者を“可哀想な人”で終わらせないことにつながる。“クエンティン・タランティーノ”監督の純真な創作愛はハリウッド映画史にとどまらないものであり、「物語ること」の力強さの証明でした。

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9位『足跡はかき消して』

私は“社会に捨てられた人たち”を掬い取って描く映画がとても好きで、必ずベスト10には入れることにしていますが、『足跡はかき消して』はまさにそんな映画。退役軍人を題材にするアメリカ映画はイラク戦争が落ち着いて以降、数を増やしていき、今はアメリカの“戦後の時代”なのかもしれません。でも時代の流れはあまりにも早く、すでにアメリカは次なる敵「移民」に夢中。そんな中で愛国心に都合よく使われて放置されたあの人たちは何をしているのか。“デブラ・グラニック”監督のこういう目線は本当に尊敬に値します。惜しいことに本作は日本では劇場未公開でビデオスルー。なるべく多くの人に観てほしいのですけどね…。

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8位『岬の兄妹』

『足跡はかき消して』に続き、『岬の兄妹』は日本という空間における“社会に捨てられた人たち”を描く一作。この手の貧困層(もしくは罪を抱えた人物)を描く邦画は毎年山ほどあるのですが、『岬の兄妹』はいろいろな意味で突出していました。ほぼ無名の監督、無名の俳優で、インディーズ映画。倫理的に確実にアウトな内容をテーマにしつつ、ただの露悪的なウケを狙っているわけでもない。シリアスとユーモアの絶妙な配合といい、描写の強烈さといい、たぶん日本で『ジョーカー』みたいな映画を作れるのはこの“片山慎三”監督以外他にいないのでしょう。いや、もう『ジョーカー』なんて余裕で超える問題作を作れちゃってますね。

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7位『バーニング 劇場版』

ヘイトクライムや凶悪事件を引き起こす犯人として「インセル」と呼ばれる主に20~30代の男性が問題視され始めました。ただのモテない男という意味だけでなく、自分の“評価されなさ”を他者や世界のせいにするという鬱屈した不満を溜めこむ状態がそこにはあり、その存在は悪と片づけるものではなくて、一種の社会の歪でもあります。そんな彼らを題材にする映画も当然出てくるわけで、『バーニング 劇場版』はその感情の不安定さを見事に表現していました。それにしても“イ・チャンドン”監督のこの毎度ながらの巧みな映像センスとストーリーテリングの合わせ技はなんなのでしょうか。インモラルな作品なのに神々しい空気さえも感じて、『バーニング 劇場版』も一瞬で虜になりました。

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6位『THE GUILTY ギルティ』

ある要素だけをピックアップしてシチュエーション・スリラーとするような映画はいくつも観てきましたけど、この『THE GUILTY ギルティ』ほど極端に洗練されたものは初めてみたかもしれない。「音」だけでこうもストーリーテリングできてしまう想像力をかきたてる。それと同時に社会への風刺にもなっている。SNS時代。私たちもつい「この人は良い人だ」「悪い人だ」と乏しい情報だけで評価して、勝手に行動しがち。でも、結局、本当にできることは「社会の片隅で苦しむ人の声を聴いて、寄り添ってあげること」だという『THE GUILTY ギルティ』のメッセージ。映画ばかり観ていないでリアルでも“声を聞く”ことをしないとな…そう反省しました。

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5位『アド・アストラ』

宣伝のせいか完全に詐欺映画みたいになっていましたね。実際の中身は一般観客を置いてけぼりにするほどの、純然たる映画文学なのですから。私は“ジェームズ・グレイ”監督の作風を知っていたので驚きもせず、夢中になれましたけど。男性的なヒロイズムに基づく科学は正しいのか。そんな問いを投げかける『アド・アストラ』は『2001年宇宙の旅』に心躍らせた“男たち”に冷や水を浴びせるものです。気候変動問題を訴える子どもを見下し、世界の場で素っ頓狂な恥晒しをしたり、科学とナショナリズムを癒着させたり…そんな人をたくさん見かけた2019年。『アド・アストラ』は偶然かもしれないですが、その年の科学界を映す鏡になっていた気がします。

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4位『ボーダー 二つの世界』

なぜ北欧映画を私は好きになってしまうのか。永遠の謎なのですが、きっと感性に合うのでしょうね。『ボーダー 二つの世界』は間違いなく私の中では北欧映画ベスト級となる一作。ルッキズムへの意趣返しだと思って迂闊に鑑賞したら、それ以上のものをお見舞いされるものだから、心臓がバックバク。すごい、攻めてる、攻めすぎている! 北欧からのノワールお伽話が教えてくれる、世間が嫌うようなモノでも明け透けに実在を描き切ることへの美学。野生動物の使い方もたまらない。割と普通の動物しか出していないのにこのインパクト(ヘラジカは特殊かもだけど)。この世界観を映像として見事に完成させた製作陣はいくら称賛しても足りないです。

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3位『ジェニーの記憶』

2019年になっても性犯罪への偏見や被害者へのバッシングが消えることはありませんでした。むしろ日本は余計に悪化している気さえする。そんな中、この『ジェニーの記憶』は性犯罪被害者本人の心の複雑な葛藤を「被害者」という肩書を取っ払って直球で描いています。こんなことができるのも、児童性的虐待の被害者本人である“ジェニファー・フォックス”監督が自分の実体験を題材にできたからこそ。その勇気がまず凄いことですし、加えて自己批判的な物語にしているのも凄い。ただの加害者を告発する映画ではないのです。同時に、歪んだ創作によって壊れた人生は、正しい創作によって再スタートできると教えてくれるような、そのエピローグに感銘を受けました。

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2位『バイス』

政治への関心がどんどん薄れている日本。その状況を打破するにはこれくらい強烈な映画を作るくらいしないとダメかもですね。『バイス』は多くの魑魅魍魎な映画を観てきた私も久々に“ドン引き”した、かなりのイカれた政治映画。いや、これは政治映画だったのか。ディストピア映画だったのではないか。でもこの政治家は現実にいる。どうなっているんだ、この世界…。そんな絶望感を叩きつける“アダム・マッケイ”監督が逆に怖い。もう党で言い争っている場合ではない。そんなことしていると暗黒の皇帝が力を増すって『スター・ウォーズ』で学んだはずなのに…。私たちにはフォースはないけどれど、権力を疑う力はあるのです。

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1位『パラサイト 半地下の家族』

別に一般公開日的には2020年の扱いにしてもいい。でも2019年のランキングに入れる。その理由はひとつ。『パラサイト 半地下の家族』は2019年にフィーバーを起こした映画なのだから。映画は旬が大事です。2019年は“ポン・ジュノ”監督の記念イヤーにしたい。それにしてもずっと好きだった監督がここまで頂点をとってしまうと、なんだか自分から離れたようで少し複雑な気持ちですね。勝手な自惚れなのですけども。作品の中身に関しては全くネタバレできないので、1位にした理由を言及もできませんけど、私はこの映画を1位という“最上位”にした。中途半端な順位ではなく“一番上”に。その意味は鑑賞した人なら察してもらえると思います。

総評&ベスト10に惜しくもリストできなかった作品

悩みに悩み抜いて決めたベスト10。毎年のことですが、3位から10位の作品は実質2位の横並びですよ。1位は不動ですけどね。

当然、惜しくも入れられなかった映画も2019年もいっぱいあります。

『女王陛下のお気に入り』『僕たちのラストステージ』『アメリカン・アニマルズ』『ザ・レポート』『芳華 Youth』『クリード 炎の宿敵』も最高に素晴らしかった。なんでベスト10って10作までしか選出できないんだろう(根源的問い)。

『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』のNetflix勢も傑作すぎて来年が恐ろしい。今後、ディズニーやAppleなど新しい動画配信サービスも増えますけど、そこでも賞レース狙いの映画が生まれるのかな。

邦画は観ているのですけど、感想記事をあまり書けていないのが悔やまれる…。1日が48時間にならないかな…。

アニメは『トイ・ストーリー4』の着地が本当に見事で、ファンの期待も大きいフランチャイズ作品をあえて終焉させる覚悟を感じました。それが上手くできるシリーズものとできないシリーズものの差が目立つ年でもあったのかも。


独自部門の個別賞

ベスト10の次は、俳優や監督のベスト…と言いたいところですが、そんなものはやり尽くされていて面白くない。そこで以下の独自な部門を勝手に設置して、自己満足で作品を選びました。

ベスト・ドキュメンタリー賞
…通常の作品とは評価基準が異なってくるドキュメンタリー作品から年間ベストをひとつ。
ベスト・エンターテインメント賞
…自分の中でその年を象徴するエンタメ満載な映画をひとつ。
ベスト・ミュージック賞
…音楽や楽曲が優れていて作品自体にマッチしていた映画をひとつ。
ベスト・アニマル賞
…個人的に「動物」が好きなので、映画に登場した動物の中からピックアップ。
メモリアル賞
…ベストに入れられなかったけど、ベスト以上に心に強く残った作品に贈ります。
忘れてない?賞
…いろいろな事情から日本でビデオスルーになってしまった良作映画に贈る、個人的イチオシ。

ベスト・ドキュメンタリー賞

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『ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説』

地球は丸くありません。平面です! そう高らかに主張し、既存の科学者を余裕の表情で論破する人たちに光をあてたドキュメンタリー『ビハインド・ザ・カーブ 地球平面説』。歴史修正主義者ならぬ科学修正主義者も昨今は拡大している世の中、これは全科学者、いや全人類が観ないといけない一作だと言い張りたい。別に地球平面説支持者をバカにする作品ではありません。彼ら彼女らの、素直な実態、恐ろしさ、愛嬌、不完全さ、誇り…そういったものをそのまま映し出し、あとはジャッジはおまかせ。反面教師にしてもいいし、「That’s Interesting」と言ってもいい。

ちなみにドキュメンタリーの2位は『一人っ子の国』、3位は『ジェーン・グドールの軌跡』か『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』かな。

ベスト・エンターテインメント賞

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『スパイダーマン スパイダーバース』

私はどうしてもベスト10からエンタメ作品を泣く泣くこぼれ出てしまう結果になることが多いのですけど、だったらエンタメ枠を作っちゃえということで。『スパイダーマン スパイダーバース』は本当だったらベスト10に入れたかったです。アニメーション表現としての完成度もさることながら、この3DCGが全盛期となっているこの時代に、まさか全く新しい一作で風穴を開けてくるとは。これはピクサーが『トイ・ストーリー』を世に打ち出しだ並みの歴史転換になるのか。それはわかりませんが、ひとつ言えるのは“フィル・ロード&クリストファー・ミラー”は凄すぎるということ。天才って本当に天才なんだなぁ…。

ベスト・ミュージック賞

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『ビート 心を解き放て』

2019年は音楽が魅力の映画がたくさんありましたが、物語と音楽が完璧にシンクロしていた映画を選ぶなら、私は2019年はこの『ビート 心を解き放て』を選び出します。もう何回鑑賞しても音楽センスとストーリーのハーモニーが良すぎる。これに関しては聴いてください、観てくださいとしか言えませんね。

ベスト・アニマル賞

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『アクアマン』の甲殻類たち

『クロール 凶暴領域』の「ワニ」にしようかと思ったのです。でも『アクアマン』のあの甲殻類たちを推せる人間は私くらいしかいないのではないか。そういう謎の使命感にかられたのでした。甲殻類というのはですね、負け組なんですよ。陸を制することもできず、陸上で生きているのはせいぜいワラジムシみたいな影の世界でひっそり“すみっコぐらし”なんですよ。海に生きればたいていは魚の餌になるだけ。それでも頑張って生きているんです。甲殻類だって、あいつらだって、エンパワーメントを感じたい。自分たちはやれるってことを証明したい。よし、だったらこの私もその情熱を最大級で応援してやろうじゃないか! おお! いくぞ! 打倒サメだ!(以下、アツすぎるのでカット)

メモリアル賞

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『ROMA ローマ』(劇場公開版)

Netflix旋風を賞レースで巻き起こした記念すべき第1作『ROMA ローマ』。劇場公開された本作を観ると、あらためて映画館で映画を観るということはなんと極上体験なのかという事実を再確認できる、本当に不思議な経験でした。そもそもこの『ROMA ローマ』、完璧すぎる。映像による感情のオーラが凄まじく、ゴジラを見てひれ伏すラドンのような気持ちになりましたよ。残念なことに劇場でNetflix作品を観る人は決して多くないのが引っかかりますが…。

忘れてない?賞

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『ある女流作家の罪と罰』

2019年も本当に数多くの良作がビデオスルーになってしまって…。Netflixオリジナル作品などのVODスルーみたいなのはまだマシだと思うのです。見やすいですから。ビデオスルーは悲しいですよね。露出が全然違ってきます。そんな中で2019年に日本でひっそり見られた『ある女流作家の罪と罰』を私は忘れてほしくない。しかし、作中の主人公が世間でキャリアアップできない中年作家という、これまた忘れられている者への目配せがあるのですから。余計にスルーしたくない。劇場公開作もいいけれど、こういう映画も観てあげてください、お願いです…。


ドラマシリーズ・ベスト5

2019年はドラマシリーズの感想記事も書くようになりました。正直、ドラマシリーズは根本的に映像量が多いのでドラマシリーズ1作の感想執筆にかかる労力が映画3~4本に相当するので大変なのですけど…。
そんな頑張りの中で、2019年の個人的ベスト5を選出しました。

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5位『マインドハンター』シーズン2

“デヴィッド・フィンチャー”はやっぱりサイコパスだった…。2019年にシーズン2がNetflixで配信されたこの『マインドハンター』はただのミステリーサスペンスではなく、「犯罪者プロファイリング」を通して「人はなぜ凶悪犯罪を起こすのか」「そんな人を私たちは理解できるのか」を問う、とんでもない追求をします。アカデミックであり、インモラルであり…。こういう学術的視点の功罪や理想と現実を見せるのが、個人的にはたまらないです。

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4位『ザ・ボーイズ』

Amazonから現れた問題児『ザ・ボーイズ』。2019年に日本でも一部で非常に話題になったドラマですので、今さら私なんかが語ることもないのですが、でもやっぱり面白いです。『エンドゲーム』の2019年に上手くハマりました。絶好調のアメコミブームだからこそ、その世間の潮流に毒を浴びせる風刺も生まれる。溜飲が下がる見事なカウンター作品。問題は今後ですけどね。シーズン1は一発屋的に露悪性を全開にしてウケを狙えるけど、これを今度どうやってまとめて風呂敷を畳むのか…。

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3位『ダーククリスタル エイジ・オブ・レジスタンス』

これは完全に私の趣味です。Netflixが『ダーククリスタル エイジ・オブ・レジスタンス』として、このご時世に人形劇でここまでの予算を投入してクリエイターの好きにさせてくれるなんて…。妄想が全部実現したみたい…。感謝しかない。Thank you !!! …パペットなんて子ども向けでしょう? しょぼい映像でしょう?とバカにしている人ほど鑑賞してほしいですね。度肝を抜かれますから。ダークファンタジー好きは必ず見ておいてください。シーズン2のために。

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2位『アンビリーバブル たった1つの真実』

性犯罪事件が発覚するたびに「冤罪じゃないのか?」「虚言じゃないのか?」「どうせ自業自得でしょ?」という意見が容赦なく向けられる。被害者の人格を勝手気ままにもてあそぶ第3者もいる。日本でも残念なことに2019年も見られました。そんなセカンドレイプの辛さをストレートに描いたこの『アンビリーバブル たった1つの真実』は、学校教育で見せたいくらいの一作。お前らに性犯罪被害者の苦しみが1ミリでもわかるというのか。それを知りたいならまずこのドラマを観ましょう。

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1位『チェルノブイリ』

「題材の知名度と衝撃度ありきの評価なんじゃないか」…そう思っていた時期が私にもありました。でも違いました。自然災害・人災どちらでもいいですが、それらを扱ううえでのひとつの完成形のような到達点にすら思える、そんな一作。考えに考え抜いてベストバランスを決めつつ、社会に突きつける鋭利さも極めた、とんでもないドラマシリーズ『チェルノブイリ』。人間、社会、科学、国家の脆さを描く本作はもはや生きるための教科書になります。絶対に見て損はないです。

他にベスト5に入れたかったドラマシリーズは『キリング・イヴ』『ボクらを見る目』『Fleabag フリーバッグ』(シーズン2)などですかね。もっと観たいところですが、なにせ時間がない…。

以上です。

2020年もたくさんの心震わす映画&ドラマに出会えますように。