2022年の映画&ドラマをLGBTQの視点で振り返る
お疲れ様でした、2022年!
2022年も終了です。LGBTQを題材にした映画やドラマ、皆さんはどれくらい観ましたか? お気に入りの作品に出会えましたか?
この記事では2022年に公開・配信されたLGBTQ(セクシュアル・マイノリティ)のキャラクターが登場する映画やドラマをピックアップしながら、私なりの視点ではありますが、この1年を振り返りたいと思います。
もちろん全部のLGBTQ作品を取り上げることはできませんので、そこはご了承ください。基本は日本での公開・配信を軸にして整理しています。
「そう言えばこんな作品あったな」「この作品は観てないぞ」とか、そんな感じで気軽に読んでみてください。
ゲイ&レズビアン
2022年も同性愛者のキャラクターが登場する作品がたくさん見られました。
まずドラマについて。特徴のひとつとして、さまざまなジャンルで同性愛キャラが描かれるようになってきたということが言えるかもしれません。これまでは恋愛主題の作品で同性愛を腰を据えて描くことがありましたが、今は同性愛がとくになんてことなくいろいろなジャンルで描かれるくらいに多様になっています。
ゲイ表象であれば、ドラマでは『バリー』(シーズン3)、『セヴェランス』、『ミッドナイト・クラブ』、『1899』など、クライムサスペンスから、SF、ホラー、ミステリーと多岐にわたります。
レズビアン表象であれば、ドラマでは『イエロージャケッツ』、『サンドマン』、『ピースメイカー』、『アウターレンジ 領域外』、『ステーション・イレブン』、『イルマ・ヴェップ』、『バッド・シスターズ』、『フォー・オール・マンカインド』(シーズン3)、『マーダーズ・イン・ビルディング』(シーズン2)、『ホワイト・ロータス』(シーズン2)、『デリー・ガールズ / アイルランド青春物語』(シーズン3)など、こちらも多ジャンルです。
もちろん恋愛をメインに同性愛をたっぷり描いてくれる作品もありました。12月にNetflixで配信されたスペインのゲイ・ドラマ『スマイリー』は大好評で、クリスマスプレゼントになりました。日本であればNHKで放送されたレズビアン・ドラマ『作りたい女と食べたい女』が冬の当事者の心を温めてくれました。2022年前半にひときわバズったドラマと言えば『海賊になった貴族』。匂わせでなく、ハッキリ同性愛を描いてくれる。これ以上嬉しいことはありません。
また、同性愛であっても、人種やディザビリティを交差的に描き、さらに包括性が増した表象も見られました。例えば、女同士カップルであっても『プリティ・リーグ』は人種の格差を巧みに捉えていましたし、『ハートブレイク・ハイ』は片方が自閉症スペクトラムで互いに理解し合いながらの模索を丁寧に描写。
もうひとつ印象的なのは、これまで同性愛をしっかり描いてこなかったシリーズやスタジオが2022年に変化を見せてくれたことです。長らく続いてきた人気ドラマシリーズの最新シーズン『NCIS: ハワイ』では女性同士のカップルが登場。NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にて源実朝を同性愛者として描いたことも話題になりました。また、ルーカスフィルムはドラマ『キャシアン・アンドー』と『ウィロー』で女性同士カップルをきっちり描き、過去の汚名返上を果たしました。
でも残念な出来事もありました。とくにレズビアン・ドラマはキャンセルされすぎだと非難轟々でした。レズビアン吸血鬼モノとして表象を更新させた『ファースト・キル』は不遇な作品の代表格として挙げられ、それに『ペーパーガールズ』、『シスター戦士』、『The Wilds(ザ・ワイルズ 孤島に残された少女たち)』、『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』…。
『Love, ヴィクター』みたいに男性同士のロマンスがメインのドラマはきっちりひととおりシーズンを描き切って終わったりするのですが…。
キャンセルじゃないけど論争になったドラマもありました。『キリング・イヴ』の最終シーズンは大荒れだったり、連続殺人犯を描く『ダーマー』は「LGBTQ」タグをつけるべきかどうかでひと悶着あったり…。最新シーズンが配信された『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や、ついに新作開幕となった『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』など一般にも人気な話題作では、クィア・ベイティングではないかとか、ゲイが悲劇的に描かれすぎるとか、激しい賛否渦巻く議論が勃発しました。年の終わり近くに配信されて2022年最大のダークホースな話題作となった『ウェンズデー』も、ネット上でのシップの盛り上がりに反して、ドラマ内での同性愛への踏み込みの無さに失望も噴出しました。
そんな話題に事欠かないドラマシリーズに対して、映画はというと、やや盛り上がりが少ないです。
同性愛を描いた映画が無かったわけではありません。当事者からもかなり高評価だった『ファイアー・アイランド』はアジア系のゲイ・コミュニティを軽やかに描き、他にも『ユンヒへ』、『スワンソング』、『リベンジ・スワップ』、『恋人はアンバー』、『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』、『セイント・フランシス』、『その道の向こうに』など。逆に海外のLGBTQメディアでワーストなゲイ・ムービーと不名誉な評価をされがちだったのは『僕の巡査』でしたが…。
しかし、映画は大作となると同性愛表象がいまだに不作です。『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』、『ソー ラブ&サンダー』、『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』など映画業界を牽引するアメコミ映画も作中にクィアなキャラはいてもその表象はささやかなもの(いわゆる「blink-and-you’ll-miss-it queer」、“まばたきすると見逃してしまう程度のクィア”と批判されるタイプの表象)。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』や『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』など、ゲイのキャラが主要人物としてでてくることは一応はありましたが、レズビアンは影すら見えず…。
意外に頑張りを見せたのはアニメーション映画かもしれません。『バズ・ライトイヤー』で女性同士カップルが明確に描かれ、『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』でディズニー初の主要なゲイ・キャラクターが登場し、最もLGBTQを忌避してきた子ども向けアニメーション映画に大きな転換点が訪れました。
アニメシリーズでは、『ドラゴンエイジ: 罪のあがない』、『全力!プラウドファミリー』、『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』(シーズン5)、『リコリス・リコイル』など同性愛を描いたものもチラホラありましたし、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は予期せぬ百合アニメとして熱狂が起きたり…。
2022年もBL/GL文化は好調で、日本だと『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のような映画もあったり、『メタモルフォーゼの縁側』のようにBL文化を取り巻く人々を描く視点のものもあったり…。『ゲームボーイズ THE MOVIE 僕らの恋のかたち』含め、タイやフィリピンなどBL/GL作品の大量輸入も相変わらずでした。
ドキュメンタリーでは日本で2022年に公開されたものとして、『チェチェンへようこそ ゲイの粛清』や『FLEE フリー』などがありました。
バイセクシュアル&パンセクシュアル
2022年のバイセクシュアルを描いた作品として、最も注目と喝采を浴びたひとつは、ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』でしょうか。自分がバイセクシュアルを認識していく過程を丁寧に描き出し、その多幸感溢れるタッチは多くのファンを獲得しました。
一方でこの『HEARTSTOPPER ハートストッパー』をめぐっては悲しい出来事もあり、それは主演のひとりである“キット・コナー”が女性と手を繋いでいる姿を目撃されただけでクィア・ベイティングだと一部で指摘され、やむなく「自分はバイセクシュアルだ」と強制的にカミングアウトしないといけない状況になってしまった事件です。バイセクシュアル・イレイジャーの問題をあらためて浮き彫りにしました。
ドラマでは『ザ・ステアケース 偽りだらけの真実』、『BATWOMAN/バットウーマン』、『ヤング・ロイヤルズ』(シーズン2)、映画では『クラッシュ 真実の愛』など、バイセクシュアル/パンセクシュアル表象はあるにはあるのですが、それでも明確な作品は少なく、可視化しづらいという難点が尾を引いています(上記の「ゲイ&レズビアン」の節で紹介した作品にもバイ/パンのキャラクターが含まれている可能性があるのでご注意ください)。
伝記映画では『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』がバイセクシュアルとしての人間関係を描いてはいましたが、『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』や『ブロンド』ではほぼ不可視化されていました。
アニメシリーズでも今年もバイセクシュアル/パンセクシュアル表象は少ないながら見られ、『ヴォクス・マキナの伝説』のような新作もありましたが、絶好調なのはシーズン3に突入した『アウルハウス』。バイセクシュアルの主人公を中心に多彩なクィアを描き、今やファンダムが最も盛況となっている子ども向けアニメシリーズの筆頭です。
トランスジェンダー&ノンバイナリー
2022年のトランスジェンダー表象の印象的な作品のひとつと言えば、やはりドラマ『アンブレラ・アカデミー』でしょう。主要人物を演じる“エリオット・ペイジ”は2020年12月にトランスジェンダーであることを公表。この『アンブレラ・アカデミー』の最新シーズンではどう扱われるのかと注目が集まりましたが、作中ではしっかりトランスジェンダー男性として普通に描かれ、俳優を最大限尊重する姿勢に安心しました。
ドラマでは、以前からトランスジェンダーの表象として脚光を浴びてきた“ハンター・シェイファー”出演の『ユーフォリア/EUPHORIA』のシーズン2が開始され、今や有色人種のトランスジェンダー・ドラマの伝説として刻まれた『POSE ポーズ』の最終シーズンも日本では配信されました。
新作ドラマもそれなりに登場しています。『HEARTSTOPPER ハートストッパー』、『サムバディ・サムウェア』、『プリティ・リーグ』…。
映画はほとんど乏しく、『エニシング・イズ・ポッシブル』は貴重な作品となりました。日本ではブラジル映画『私はヴァレンティナ』も2022年に公開。同じく日本では2022年公開の『ウエスト・サイド・ストーリー』にも脇役ですがトランスジェンダーのキャラクターはいましたが…。『ホーカスポーカス 2』みたいに、ドラァグクイーンが背景的にでてくる作品は多少なりともあるのですけど…(注:ドラァグクイーンがトランスジェンダーであるとは必ずしも限らないです)。
オープンリーなトランスジェンダーのキャラクターが登場するはずだった映画『バット・ガール』の突然のお蔵入りのニュースはそういう意味でも本当に悲しいものでした。
海外では当事者起用が前提になりつつあるトランスジェンダー表象ですが、日本では最新シーズンが配信された『今際の国のアリス』や日本リメイクの『六本木クラス』のように当事者起用ではないことも多々あります。そんな中で、ドラマ『チェイサーゲーム』は当事者俳優のキャスティングで先駆的な一歩を踏み出しました。
トランスジェンダー俳優が活躍した作品は他にもあります(演じているキャラがトランスかどうかはわからない)。『令嬢アンナの真実』の“ラヴァーン・コックス”、『ペリフェラル 接続された未来』の“アレクサンドラ・ビリングズ”など。
そう言えば、変わり種の映画もありました。日本では2022年に公開となった『TITANE チタン』です。これもトランスジェンダーと身体の関係の暗喩に満ちた作品とも言え、観客によって解釈は全く異なるでしょうが、ひとつのトランスジェンダー映画と受け取れなくもないです。
アニメーションでは『デッド・エンド: ようこそ! オカルト遊園地へ』や『ウェンデルとワイルド』で大々的にトランスジェンダーのキャラクターが登場。ミニシリーズの『ベイマックス!』では生理のエピソードでトランスジェンダーと思われる人物が登場し、包括性の高い描写が成立していました。
なお、海外のメディアでもそうした批評はありましたが、『犬王』はクィアな映画としてみなせる作品だったかもしれません(ジェンダー・ノンコンフォーミングな表象がある)。
一方の2022年のノンバイナリー表象についてですが、最近はドラマでもノンバイナリーのキャラクターがボチボチと徐々にですが増えてきました。
話題沸騰の『海賊になった貴族』を始め、『サンドマン』、『ウィンチェスターズ』、『Pバレー: ストリッパーの道』、『チャッキー』、『クィア・アズ・フォーク』(シーズン1でキャンセル)…。
ノンバイナリー表象のあるアニメシリーズとしては、『パインコーン&ポニー』、『アウルハウス』、『RWBY 氷雪帝国』…。
映画では全然いないのが残念ではあります。『ゾンビーズ3』は貴重なレプリゼンテーションでした。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の“エマ・ダーシー”、『僕の巡査』の“エマ・コリン”や、『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』の“ジャネール・モネイ”など、ノンバイナリー俳優が活躍することはあったのですが…。ちなみに余談ですけど、実は日本のアニメにおいて英語音声で吹き替えている海外の声優の方の中にはわりとノンバイナリーの人が少なくないです(例えば『リコリス・リコイル』で春川フキの英語吹き替えを担当する“モーガン・ベリー”など)。
トランスジェンダーやノンバイナリーとは違いますが、インターセックスの表象としてドラマ『XX+XY ジェイの選択』があったことも付記しておきます。
アセクシュアル&アロマンティック
他者に性的に惹かれない「アセクシュアル(アセクシャル)」、他者に恋愛的に惹かれない「アロマンティック」。これらアセクシュアル/アロマンティックの表象はLGBTQの中でもとくに大きく不足しているもので、表象があっても年に1作あるかないかでした。
しかし、2022年は大変革の年となりました。アセクシュアル/アロマンティックの表象が片手では数えきれない数になったのです(それでもまだ両手でなら数えられるのですが…)。
オーストラリアの青春学園ドラマ『ハートブレイク・ハイ』ではアセクシュアルと思われる男子生徒が登場し、『レジェンド・オブ・トゥモロー』シーズン7ではドラマ初のオープンリーなアセクシュアルのスーパーヒーローが登場。ドラマ『インパーフェクト』も主要キャラが1話目からアセクシュアルを公表し、変わったアプローチでその葛藤を描いていました。
アダルトなアニメ『ビッグマウス』では、アセクシュアルと人種を交差的に描き、多様な性的指向の包括性をさらに深めることを達成。
日本も負けてません。2022年は1月からNHKでアセクシュアル・アロマンティックの男女の共同生活を描くドラマ『恋せぬふたり』が放送され、話題となり、さらに12月にはアセクシュアル・アロマンティックの女性を主人公にした映画『そばかす』が公開。2作とも当事者取材型の表象なのでややバリエーションに欠けますが、大きな一歩です。
アニメでは『ロマンティック・キラー』が、恋愛をしたくない人たち同士が集まる居心地の良さを描き、アセクシュアル/アロマンティックにフレンドリーな内容でした。
その一方で今年最も視聴の勢いを世界的に見せた『ウェンズデー』はアセクシュアル・イレイジャーであるとの批判もあったり、まだまだアセクシュアル/アロマンティックの最大の敵である恋愛伴侶規範の存在はしぶといです。
また、「アセクシュアル/アロマンティック」という言葉で説明してくれないと、なかなかその作品がアセクシュアルやアロマンティックのキャラクターを描いていると断定しづらいという問題もあり、やはり依然として相当に可視化されづらい表象なのは間違いありません。
全体を振り返って
こうやって一気に2022年のLGBTQ作品を振り返ると「こんなにあるんだ」と思ったかもしれません。でもマジョリティな性的指向やジェンダー・アイデンティティを描く作品はこの何百倍もありますからね。映画やドラマにおけるLGBTQのレプリゼンテーションは、現実をまだまだ反映しきれていません。
ここ10年で表象の数は増えている傾向にあるのは専門的なモニタリング組織の報告でも確認されているので事実です。例を挙げるなら、「ディズニーはLGBTQ表象に消極的」なんていうイメージも実際の状況を見るともはや当てはまらないわけで、その昔ながらの認識自体をアップデートしないといけません。ちなみにGLAADが2021年の映画を対象にハリウッドの大手スタジオのLGBTQ表象を調査したレポートによれば、調査対象の大手スタジオの中でディズニーが一番「最高評価」を獲得したそうです(と言ってもまだまだ「不十分」だとも述べられていますが…)。
しかし、今後はそのバランスや質にも目を向ける必要があるでしょう。「LGBTQを描くかどうか」ではなく「どう描くか(どういう内容で描くか、どういう姿勢で描くか)」に焦点を切り替えるということです。
GLAADでは「Vito Russo Test」という指標を独自に開発したりしています。
同性愛の表象はジャンルが豊富になりました。でもマイナーなドラマはキャンセルされやすいです。一方で同性愛表象が充実する傍ら、他の性的指向や性自認の表象は量的に同等とは言えず、映像・物語としての可視化しやすさやファンダム需要規模などの違いもあって格差が生じています。人種やディザビリティ(病気・障害)などの交差性もセットで包括的に描けるのか、当事者を起用できるのかという論点もあります。
当事者起用と関連することと言えば、当事者がバッシングを受けるリスクも生じます。「ポリコレによる押し付けだ」などという勝手な偏見ありきの決めつけで、参加当事者を誹謗中傷したり、作品にレビュー爆撃を仕掛ける輩は残念ながら日本を含め世界中に潜んでいます。大作となればその危険は増し、作品制作スタジオや配給会社は当事者をディフェンスしないといけないという課題も発生します。アメリカでは保守勢力によってLGBTQ作品の検閲や教育からの排除が現実で起き始めており、予断を許さない状況です。また、トランスジェンダーへの差別主張は陰謀論的に世界に拡散してもいます。「どう描くか」だけでなく「どう守るか」も考えないといけないのは悲しいことですが…。
日本ではディフェンスどころか、当事者が業界でのびのびと働ける環境も未整備で、製作者側もLGBTQをブームを見なして(また俳優側はLGBTQを新たな演技の挑戦的なお題目として)消費する印象がぬぐえず、現実社会の運動に参加・支援する姿勢が乏しい実態も観察できます。良い作品もあるのですが、LGBTQ表象を根底で下支えする全体の業界システムそのものが日本は構築が遅れています。作品に参加する一部の個人クリエイターの頑張りに頼り切るのでは限界があるのです。
来年はこうしたより現実と連動した問題にこそ向き合わないといけないのではないでしょうか。
GLAADの報告によれば、LGBTQ当事者の約64%がメディアにLGBTQが正確に表象されていればプライドやサポートを感じると回答しています。レプリゼンテーションはなおも必要です。
2023年への期待と注目作
最後は2023年の期待と注目のLGBTQ作品(映画&ドラマ)を一部紹介して、前向きな気分になっておきましょう。
映画はやはりなんと言っても『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。アメリカ本国では2022年に公開され、瞬く間にこの年の顔となる映画に。物語は、レズビアンな娘のセクシュアリティを受け入れられない母と、その母にイラついて自暴自棄になる娘の、超クィアなストーリーでもありますので、これは見逃せません(すっごい癖のある演出のオンパレードなので見る人を選ぶ映画だけど)。日本では2023年3月に劇場公開です。
他にも先行して海外では公開されてLGBTQ界隈で好評となっている『ベネデッタ』、『Benediction』、『Bros』、『The Inspection』、『Close』、『Bodies Bodies Bodies』、『Tár』といった映画も要チェック。まだ誰見ぬ新作のクィア映画には“M・ナイト・シャマラン”監督の『ノック 終末の訪問者』なども。トランスジェンダーを描いてカンヌで話題となったパキスタン映画『Joyland』も楽しみ。
日本映画ではゲイな関係を描く『エゴイスト』も公開待機中です。
ドラマについては、『Lの世界 ジェネレーションQ』シーズン3など日本ではまだ見られない最新シーズンも待ち遠しいです。『Interview with the Vampire』や『Star Trek: Strange New Worlds』など日本ではまだ未配信のクィアなドラマも早く観たいところ。LGBTQ表象として喝采を受けたゲームのドラマ版である『ラスト・オブ・アス』も期待大です。クィア色が濃い『ドクター・フー』の最新作も日本でも観られるのかな?
ハーレイ・クインの女女LOVEなアニメ『Harley Quinn』はいい加減、日本で観られるようにならないんですかね? 不穏なワーナーに潰される前に鑑賞したい人は私だけではないはず。
ホラー作品とクィア表象の複雑な歴史を整理したドキュメンタリー『Queer for Fear: The History of Queer Horror』も興味ある人はいるはず。
個人的にはインターセックスを主題で描くフランスのドラマ『About Sasha(Chair Tendre)』に注目していますが、これはそもそも日本で見られるのか、見られるとしたらどこで見られるのか、不明です…。
2023年もLGBTQ映画やドラマをたくさん観れることを願っています。レプリゼンテーションを紹介し合ったり、感想を語り合ったり、批判し合ったり、それも大切なことです。
HAPPY NEW QUEER !
オマケ
✔2022年に出版されたLGBTQに関する書籍のオススメ
- 『トランスジェンダー問題 議論は正義のために』
- 『ノンバイナリーがわかる本 heでもsheでもない、theyたちのこと』
- 『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』
- 『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』